【投稿停止】クラスで1番可愛い女の子の親友が恋愛相談をしてきたのでアドバイスしたが、どうやら俺のことが好きらしい

穂村大樹(ほむら だいじゅ)

第1章

第1話 好きな人が付き合った

旭日あさひ君、今日までずっと相談に乗ってくれて本当にありがとう。行ってくるね」


 そう言って俺に笑顔で手を振り、背を向けて走り去っていったのは同じクラスの三鼓みつづみくるみ。


 三鼓はクラスで一番可愛いと言われている女子で、男子から絶大な人気を誇る。


 肩上程度に切り揃えられたサラサラの髪、米粒の様な小さい顔(言い過ぎ)、誰にでも優しくできる性格と三拍子揃った三鼓のことを好きにならない男子はいないと言っても過言ではない程だった。


 しかし、今日でクラス中の男子が絶望を味わうことになるだろう。


 三鼓は今から告白をしにいくのだから。


 告白の相手は三年生の片桐先輩。


 片桐先輩が三鼓に恋愛感情を抱いているという情報は仕入れているので、今回の告白は恐らく成功する。


 そんな三鼓と俺、旭日あさひ健祥けんしょうがなぜこうして告白をしに行く前に会話をしていたかというと、以前から三鼓の恋愛相談に乗っていたからである。


 自分自身では全く持ってそう思ってはいないが、俺は恋愛マスターと呼ばれている。


 中学時代からの付き合いで誰よりも仲が良い男友達の若月わかつき春瑠はるから恋愛相談をされた時、見栄を張って何人もの女性と付き合っていると嘘をつき、家でひたすらに読んでいるラブコメ知識を活かしてアドバイスをすると若月の告白は見事に成功。


 好きな人と付き合えることになった若月はテンションが上がってしまい、俺のことを恋愛マスターだと吹聴してしまった。

 その結果、多くの生徒から恋愛相談を受けるようになり、三鼓からの相談にも乗っていたのである。


 一ヶ月もの間恋愛相談に乗っていただけに、この告白は必ず成功してほしい。


 しかし、そんな思いとは裏腹に失敗してほしいという思いもあった。


 それは俺が無謀にも、クラスで一番可愛いと言われている三鼓のことが好きだからである。






「片桐先輩。ずっと前から先輩のことが好きでした。私と付き合ってください!」


 自分の想いを片桐先輩に伝え、頭を下げた三鼓を僕は校舎の陰から見守っていた。


 あそこに立っているのが片桐先輩じゃなくて僕だったら良かったのに……なんてあり得もしないことを考えたところで無意味なのは理解しているものの、そう考えずにはいられなかった。


「ありがとう。嬉しいよ。僕も三鼓さんのこと、好きだったから」

「--! ありがとうございます!」

「これからよろしくね。三鼓さん」

「はいっ!」


 表情をパァッと明るくして嬉しそうな表情を見せている三鼓を見て、僕の心は一気に暗くなっていった。


 ……いや。ダメ元で好きになっただけなんだし落ち込む必要なんてないよな。


 俺みたいな恋愛未経験者が三鼓と付き合いたいと思うなんて、幼稚園児が大学に合格するくらい無謀な話である。


 間接的に失恋してしまった僕は落ち込む自分を心の中で優しく慰めながら、校舎の角で見つからないように息を殺して三鼓と片桐先輩の楽しそうな表情を恨めしそうに見続けていた。 

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