第3話 美味しいご飯と嬉しい再会
シェリーと話したジェラルドはその後公務のため、執務室へと戻っていった。
自室に案内されてゆっくりと過ごしたのち、ディナーのためにダイニングへと向かう。
すでにダイニングにはジェラルドが席についており、その左側前の椅子へと促されて座る。
「公務で忙しい時以外はできれば一緒に食べたいのだけれど、いいかな?」
「…………」
「シェリー?」
「あっ! 申し訳ございません。その……私は9歳以降家族と食事をしたことがなかったので、人と食事こうした食事をするのは久しぶりだなと」
その言葉にジェラルドは立ち上がり、そっとシェリーを抱きしめた。
「ジェ、ジェラルド様っ?!」
「これからは私となるべく食事をしよう。たくさんぬくもりを感じてほしい」
「は、はいっ!」
シェリーは急に抱きしめられた衝撃で脳がショートしそうになったが、気持ちを抑えるようにゆっくりと息を吐く。
すると、ジェラルドはそっと耳元で囁いた。
「それに君に会わせたい人がいるんだ」
「え?」
そう言うと、近くにいたセドリックに合図をしてドアを開けてある人物を呼び込んだ。
その茶色い髪を靡かせたメイドにシェリーはとても見覚えがあり、そして再会の嬉しさに思わず口元を手で覆って涙をためた。
「アリシアっ!!!」
「お嬢様っ!!!」
二人はおもむろに駆け寄ると、お互いの熱を確かめ合うように強く抱きしめ合った。
その様子をジェラルドやセドリックは微笑ましそうに眺める。
「アリシア、どうして」
「陛下が呼んでくださったのです。お嬢様には君が必要だからと」
「ジェラルド様が……」
シェリーは涙を拭ってジェラルドのほうを向くと、深々とお礼をした。
「本当にありがとうございますっ!」
「ああ、君とそのメイドさんはすごく仲がよさそうだったからね。別れるのは辛いだろうと思って」
シェリーは再びお礼を告げると、アリシアに促されてテーブルについて食事を続ける。
これまで虐げられてきたシェリーは温かいご飯に心まで温まり、そしてほっとした。
(なんて美味しいんだろう)
こっそりとアリシアがキッチンからもらってきてくれたパンやスープも美味しかったが、昔の可愛がってもらっていた頃の食事と比べても豪華な目の前の食事に思わずスプーンが止まらない。
そんななんとも美味しそうに食べるシェリーの様子をジェラルドは嬉しそうに眺めていた。
そして、デザートが運ばれてきたときにジェラルドはシェリーに言う。
「シェリー」
「はい、なんでしょうジェラルド様」
「このあと、私の部屋に来てくれるか?」
「へ?」
シェリーは思わず持っていたデザートフォークを落としそうになった──
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