人として

秋穂碧

第1話 にじいろ

その日は雨が降っていた。

僕の今の心情を表すのに、これほどぴったりな天気はないだろう。


電話が鳴る。そろそろか…と思い、覚悟を決める。


車に乗り込み、エンジンをかける。

周りがまるでモノクロに見える。白黒の世界は静かでひんやりとしていた。


この期に及んで、まだ決心がつかないなんて。和紗かずさに笑われるな、と思った。


自分の意気地のなさが嫌になる。それでもいいと、言ってくれたじゃないか。

決めきれないのは、僕の悪い癖だった。


それでも、時間は押し迫っていた。早く、早く、どちらかに決めなくては。


焦りからか、手が震えてくる。


目的の場所に着き、右往左往しながら、廊下をぐるぐると歩き回る。

なんて、落ち着きがないんだろう。


扉が開く。向こうから歩いてきた人が僕に微笑む。



「おめでとうございます。元気な女の子ですよ」



その瞬間、一気に世界に色がついたようなそんな気がした。

いつの間にか雨はやんでいて、空には虹がかかっていた。

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