変身
うみのもずく
第1話
ある朝目が覚めると、巨乳美少女になっていた。その時の衝撃たるや、筆舌に尽くしがたい。こちとら17年間女体とは無縁の生活を送ってきた身である。女兄弟はおらず、女友達も当然いない。恋人など論外である。そんな男が急に己の体を女へと変貌させたのだ。驚きのあまり、発狂してもおかしくないくらいだ。
しばし呆然と鏡を見続けたあと、今後のことを考える。よく漫画やアニメで見かけるシチュエーションだが、大抵は女の体を得たことでめくるめくお色気イベントを体験していくのが王道である。自分も当然そうすべきだろう。女子と一緒に着替え、風呂に入り、合法的に裸も見放題。まさに楽園、パラダイスである。
だがここでひとつ問題があることに気付く。自分は確かに巨乳少女へと変身した。奇跡のような出来事だが、浮かれてもいられない。こんな非常事態で考えるべきことではないかもしれないが、まずは学校だ。この姿ではこれまで通りの生活を送ることは難しいだろう。何しろ全くの別人になってしまったのだから。この姿で高校に行って受け入れてもらえるか?親には何と説明する?問題は山積みであった。
気付いたが、美少女だろうがブサイクなおじさんだろうが問題の本質はそこではないのではないか。自分が自分以外の何かになってしまったことが問題なのだ。
こんな時あれこれ悩まずにお気楽に美少女ライフを楽しめるような性格ならば良かった。その方がきっと楽しいだろう。原因が分からない以上、できることは何もない。受け入れるしかないのだ。
とりあえず私服に着替える。身長はさほど変わっていないが、体の線が細くなったぶん服がゆるく感じられた。
街に出るとすぐに変化に気付いた。向けられる視線の種類がいつもと全く違う。みな自分に対し好意的な目を目けているように感じた。中には纏わりつくようなものもある。なるほど、こんな風に美少女は注目を浴びているのか。いつもの自分とあまりに違っていてなかなか慣れない。
そんな時であった。背後にふと気配を感じ振り返る。だが遅かった。口元に布を押し当てられ、車にそのまま押し込まれた。電光石火の出来事であった。
意識を失う寸前。美少女に生まれることは圧倒的なアドバンテージだと思っていたが、こんな風にリスクも抱えているのだなと。もしこの場を切り抜けられたら、美少女には優しくしよう、そう思って瞳を閉じた。
目を開けると、そこはいつもの見慣れた天井だった。慌てて己の体を確認する。巨乳美少女ボディではなかった。どうやら夢だったらしい。ほっと胸を撫で下ろし、再び眠りについた。
変身 うみのもずく @umibuta28
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