白紙の記憶

さぼん

第1話



 いつもなら完全に締切ってるカーテンの隙間から光が漏れて眩しく感じて目を開けた。

本来なら素晴らしい朝のお出迎えなのだが、今日は体のだるさと頭の痛さが出迎えた。

 時間を見ようとスマホを手当り次第に探そうと手を伸ばそうとした手の先に温もりを感じた。

だるい体を横にするとそこには女の子がいたのだ。一瞬だけだるさよりも困惑が勝ち目が覚めたような気がする。なぜこの女の子がいるのか。なぜ俺の隣で寝ているのか、なぜ俺はこの女の子を家にあげたのか。

 この女の子には見覚えがある。昨日の夜の記憶はほとんど抜け落ちているが、俺の記憶が抜け落ちる前にこの女の子は存在しているのだ。

 ある程度デートをしているのであれば成功するなんて誰が言ったのか、俺はデートを重ねた意中の女の子に振られた。我ながら成功するとどこか自信に満ち溢れていたせいで振られた時の絶望感は俺の今までの人生の中でぶっちぎりで1位になった。

 振られたその足で、やけ酒を喰らってるその時に隣にいた女の子が今、俺の隣に静かな寝息を立てている。

 そこから俺の記憶はない。その夜にこの女の子と何があったのか、最悪なことを考えるともっと体と頭が重くなる。まず、この女の子の名前すら覚えてないのだ。俺から喋りかけたのか、俺から家に上がるよう提案したのか。もしかしたら、この女の子も俺と同じく抜け落ちているかもしれない。ならば起こした方がいいのか、いや、なんと起こせばいいのか。

あの光の眩しさを感じてからどのくらい経ったのか色々考えあぐねているうちに俺の隣の女の子が目を覚ましてしまったのだ。

 何を話すか。いや、パニックを起こされる前に謝るか。それともあたかも昨日の夜を繕うように話せばいいのか。

「あ、え、えと」

「ん、おはよ。悠介くん。」

女の子だけは全て知っているみたいだ。

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白紙の記憶 さぼん @nsabonn

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