第83話 救出に動く三人
僕は君塚君から何があったのかを聞いて、頭の中が真っ白になった。
『すまねぇ上原。俺……俺……っ!』
「君塚君は悪くない。だから謝らないでよ」
「……恭平さん」
「なに?」
「スピーカーモードにしていただけますか?」
「わ、わかった」
清華さんに言われるがまま、僕は通話をスピーカーモードにした。
「君塚さん」
『っ! 柊さん!? あんた、上原と一緒にいたのか!?』
「小泉さんがさらわれたと聞こえました。助けに行きましょう」
『ダメだ! あんたまで行ったら、立山に何されるか……!』
「小泉さんをこのままにしておけません。ですよね? 恭平さん」
「うん。僕も助けに行きたい。僕が行っても役に立たないのはわかってるけど、それでもじっとなんてしてられないよ」
瑠美夏をそんなヤツの好きになんかさせたくない。
『でも、どうする? ヤツの行きそうな場所には心当たりがあるが、ヤツはこの辺りでは敵なしと言われるほどのヤンキーだ。見つけても小泉を助け出す術は───』
「ご心配には及びません。加奈子さん!」
「はい。清華お嬢様」
清華さんが呼ぶと、瀬川さんが二秒で部屋に入ってきた。
え? そんなに近くにいたの!?
「小泉さんを助けに行きます」
「承知致しました。大至急車を玄関前に用意します」
そう言って瀬川さんはスマホで誰かへと電話をかけた。
「瀬川です。緊急事態につき、私の車を大至急玄関前にお願いします」
多分執事か警備の誰かにかけたのだろう。
手早く連絡を済ませた瀬川さんは、僕達に近づき、スマホ越しの君塚君に声をかけた。
「君塚様」
『う、うっす』
「彼の者がどこに行ったか、心当たりがあると仰っていましたね」
『そ、そうッスね』
「では君塚様はそこに向かってください」
『え?』
君塚君一人で? それだと僕たちが目的地に辿り着けないのでは……!?
『で、でもそれだとそっちがどこに行けばいいか分からなくないッスか?』
だよね? 普通に考えたら君塚君と合流してから四人で追いかけた方がいいと思うんだけど。
「ご心配には及びません。失礼ながら、貴方と初めてお会いしたあのハンバーガーショップで、貴方の制服にGPSチップをつけさせていただきました」
『なっ!?』
「えぇ!?」
あの短いやり取りでいつそんなものをつけたの!?
あ、もしかして、君塚君の肩に触れた時かな?
「ですので君塚様はそのまま目的地まで移動をお願いいたします」
『わ、わかり……ました』
「では後ほど」
瀬川さんは僕のスマホの通話終了ボタンをタップして、一方的に通話を終わらせてしまった。
「行きましょうお嬢様、上原様。ことは一刻を争います!」
「えぇ」
「わ、わかりました」
僕たち三人は部屋を出て、走って玄関まで向かった。
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