第81話 元『悪女』たちの前に立ちはだかる男
時間は少し遡る。
「きょーへー……今日も学校には来なかった」
やっぱり精神が弱っているから、昨日の今日でいきなり学校に来たりするのは無理よね。
それに、私がきょーへーを元気づけることが出来なかったことが、正直に言えば少しだけショックだった。
でもまぁ、仕方ないよね。きょーへーにそれだけのことをしてきたんだから……。
「元気出せよ小泉」
「って、なんであんたが私を待ち伏せして一緒に下校してんのよ!?」
今、私の隣にいるのは君塚だ。
こいつはなぜか新栄高校の近くまで来ていて私を待っていたみたいで、そのまま私に付いてくる感じでこうして一緒に歩いている。
「まぁいいじゃねえか。そんな細かいこと」
「細かいって……。そんなの何日もやられたら太くなるわよ」
君塚がこうして一緒に下校してくるのは何も今日が初めてではない。
きょーへーと屋上で話した日の翌日くらいから、君塚は頻繁に私に付き纏い始めたのだ。
こいつとはまぁ……友達だけど、周りに彼氏と誤解されそうで、そこが心配だった。
「言っとくけど、私はあんたを好きになったりしないわよ!?」
「知ってるよ。お前が好きなのは上原だろ?」
自意識過剰かもしれないけど、しっかりと釘をさしておこうと思って言ったんだけど、君塚は既に私の気持ちを知っていた。
「知ってたの?」
「まあな。ここ数日のお前の態度が明らかに変わったのを見て思ったんだよ。なんで好きな男にあんなことするかねぇ……」
「うぅ……言い訳はしないわ。あんたにも嫌な役をやらせてしまって、その……ごめんなさい」
「……」
私が謝ったのに、なぜか君塚は無反応だった。
「ちょっと。何か言ってよ!」
「あぁ……悪い。人ってここまで変われるんだなと思ってな」
「ぐぬぬ……」
これも事実だから反論できない。
「ま、あれがきっかけで俺は上原と知り合えて、それからダチになれた。俺たちが上原にやっちまったことはとんでもなくデカいことだったし、上原にはまだまだ償いきれてねぇが、その点だけは感謝してるよ」
「あんた……いつの間にきょーへーと仲良くなったのよ!?」
知らなかった……きょーへーもどうやってこいつを許したの……って、考えるまでもないわね。
きょーへーは人を恨むことを知らない、超がつくほど優しい人だ。だから君塚を最初から恨んでもなかったと思うし、こいつの謝罪を受け入れて、それから友達になったんだ。
私も、いい加減きょーへーに謝らないと……。
昨日はきょーへーの中にある誤解を解かないとって思いだけが私の中にあったから、謝れなかった。だから次にきょーへーに会ったら、きちんと謝ろう。
ちゃんと謝って、そしてきょーへーがもう一度振り向いてくれる女になる。
時間をかけてでも、もう一度そのスタートラインに立つんだ。
「……俺がこうしてお前と一緒に帰ってるのな……」
「え?」
君塚がこうして私と一緒に下校してるの、ちゃんと意味があったんだ。
なんだろ? きょーへー絡みだったら嬉しいけど、そんなわけないよね。
「実は───」
「よぉ……康太」
「「!?」」
君塚が理由を話そうとした瞬間、私たちの前方から低い男の声が聞こえてきた。
声のした方を見ると、君塚よりもチャラついた……ヤンキーみたいな男が立っていた。
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