第70話 『聖女』のゴシップ記事
清華さんとデートをした翌日の月曜日。
僕はいつもより早く屋敷を出て登校した。
別に日直だからって理由ではない。
告白を決意して、その告白のシーンを色々とシミュレーションしてしまい、清華さんの顔をまともに見れなかったからだ。
おかげで清華さんだけでなく、瀬川さんをはじめとした屋敷の人にも不思議そうに見られてしまった。
昨夜のシミュレーションのおかげで、なんとなくだけど告白のシチュエーションも、清華さんに伝える言葉も考えれた。
おかげでけっこうな寝不足だ。
以前までの生活なら、これくらいの睡眠時間は当たり前だったのに、今の生活に慣れてしまったからか、少しまぶたが重い。
けど、しゃきっとしないと。放課後は、清華さんに告白をするんだから。
「そうだ。忘れないうちに清華さんにメッセージを送らないと」
単純に、放課後話がありますって伝えるだけ。
「よし。メッセージ送信完了」
送信を終えると、僕の心拍数が一気に跳ね上がった。
これでもう後戻りはできない。
清華さんに告白する未来が確定された。
放課後のことを考えると緊張して喉が渇く。
そういえば、僕の告白が失敗したら、さすがに清華さんの屋敷には居られないよね。昨日、そこまで考えてなかった。
僕もそうだけど、清華さんも自分が振った相手と一緒の屋敷で暮らすのは気まずいはずだ。
振られるのは怖いけど、そうなったら潔く屋敷から出ていこう。
それで、今までのお礼を込めて、後日何かお菓子の詰め合わせでも送ろうかな。柊家の皆さんにはお世話になりっぱなしだし。
ネガティブな考えをしていると、新栄高校の校門か見えてきた。
いけないいけない。もっとポジティブな、清華さんと付き合えた時のことを想像するんだ。気持ちが沈んでたら勝てない勝負がさらに勝てなくなるからね。
「ん?」
下駄箱で靴を履き替え、人がまばらな廊下を教室に向けて歩き始めてすぐ、掲示板に何かを貼っている生徒を見つけた。
「新聞部の人が。こんなに早い時間から来ているんだ」
ということは、今貼っているのは校内新聞かな?
あ、新聞部の人が貼り終えて掲示板からさっていった。
んー、教室に行ってもやることないし、校内新聞でも見てみようかな?
僕はゆっくりと掲示板に近づいて行き、さっき新聞部の人が貼った掲示板を見た。
そして、その書かれている見出しを見て、僕は愕然とした。
『聖ルナからやってきた聖女様に熱愛発覚! お相手は同じクラスのイケメンS』
「……は?」
その校内新聞には、そんな見出しと、体育館裏で固い握手を笑顔で交わす清華さんと……顔はぼかされているけど、竜太の写真があった。
『二人は交際をスタートさせ、怪しまれないように別々にクラスに戻っていった』と書かれている。
別の写真では、同じく体育館裏で、今度は一緒に校舎へ向けて歩いている二人の写真。
『二人のクラスメイトからは、「以前クラスの何人かとカラオケに行ったけど、そこでも二人はすごく仲良さそうにしていた」との情報も! これは確定か!?』
確かに。あのカラオケでも、二人の距離は近くて、竜太が清華さんに耳打ちしていたし、清華さんがそれを嫌がる素振りも見せなかった。
三人でテスト勉強した時も、竜太と清華さんの二人だけが分かるような会話をしていて、僕にはそれを話してはくれなかった。
「竜太……。清華さんとは、友達って言ってたのに……。清華さんも、昨日はやっぱり僕を落ち込ませないために、仕方なく付き合ってくれたんだ」
僕を清華さんの屋敷に住まわせるのだって、ずっと以前から打ち合わせをしていないと、一日二日で僕を屋敷に招き入れるなんて真似、出来るわけないよね。
それに、僕が自分の家から出る前に、竜太が誰かと電話していたけど、やっぱりあれは清華さんだったんだ。
竜太と清華さんは、僕の知らないところで、ずっと前から仲が良くて、それでどちらともなく告白して、それで交際が始まって握手をしていたんだ。
そうとは知らずに、僕は……清華さんが好きだと、彼氏である竜太に告げてしまうなんて。
「はは……」
僕はポケットからスマホを手に取り、電話をかけた。
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