第69話 告白は明日しろ

『そうか! 告白を決意したか!!』

 デートから帰った夜、僕は竜太に電話していた。

「うん」

『そっかそっか! お前が瑠美夏以外の女子にここまで好意を持つなんてな』

「自分でもびっくりしてるよ」

 自分の感情にもびっくりしてるけど、僕にはもう一つびっくりしていることがある。

 それは、竜太が瑠美夏を名前で呼んでいることだ。

 少し前までは『あの女』としか言わなかったのに、今では当たり前に名前で呼んでいる。

 瑠美夏との間で何かあったのかな?

『しかし、これでお前も彼女持ちか』

「いや、まだ付き合えると決まったわけじゃないし」

 そもそも、告白を決意しただけで、僕は振られると考えてるし……何より釣り合っているとも思ってない。

 それでも、ちゃんと想いだけは伝えたい……と思ってる。

『いやいや、そんなん告ってみないとわからんだろ』

「だといいんだけどね。まぁ、最初から玉砕覚悟だし」

 僕は乾いた笑いを漏らした。

『そんな弱気でどうすんだよ? 相手はあの『聖女』なんだからな?』

「わかってる」

 高校生の僕が、三つ星レストランの厨房に立てるかどうかの試験を受けるくらい無謀な挑戦なのは僕が一番分かってる。それでも、告白するって決めたんだ。合格OKをもらえる気構えでのぞむつもりだ。

『お前ならきっと大丈夫だ。自信もって告白しろ』

「ありがとう竜太。とても心強いよ」

 竜太がいなかったら、僕は清華さんに好意を持つどころか、こうやって仲良くなることさえなかっただろう。だから、こうして清華さんの屋敷にお世話になるよう頼んでくれた竜太には感謝しかない。

『柊さんと付き合っても、ちゃんと俺とも遊んでくれよ?』

「もちろんだよ」

『それでいつ告白するんだ?』

「えっと、それはまだ……」

 告白を決意しただけで、いつ実行するかはまだ決めていなかった。

 どうしよう……やっぱりもう少し仲良くなってから……。

『明日しろ明日!』

「あ、明日!?」

 竜太からまさかの案が飛んできた。

『なんなら今からでもいいんじゃないか? 同棲してるんだから』

「むむ、無理だよ今からなんて!」

 言葉なんて全然まとまってないし、こんな状態で清華さんと対面してちゃんと話せるかも怪しいのに。

『ははっ、今からってのは冗談だ。何伝えるか一晩じっくり考えて明日の放課後に柊さんをどっかに呼び出してみろよ』

 明日告白しろっていうのは本当なんだ。

「う、うん……」

『自信持て恭平。お前なら絶対大丈夫だ』

「……わかった。ありがとう竜太」

『おう。じゃあそろそろ切るな?』

「うん……おやすみ竜太。また明日ね」

『おやすみ恭平。しっかり寝ろよ?』

「分かってる」

 竜太との通話が終了し、僕はスマホをベッドに置いた。

 成り行きで明日告白することになっちゃったけど……大丈夫かなぁ?

 時間が経てば僕の決意も鈍ると思った竜太だからこその提案なのはわかってる。僕も時間を置いたら鈍っちゃうと思ってるから。

「すぅー…………はぁーー…………よし!」

 僕は一度深呼吸をし、気合いを入れた。

 とにかく明日、清華さんに告白だ。

 僕はベッドに入り、明日伝えるセリフを脳内で考えながら目を閉じた。……が、当然眠れるわけもなく、夢の中に入ったのは何時間も経過してからだった。



「部長、出来ました。会心の出来です」

「よし。それを明日の朝イチで掲示板に貼るんだぞ! 我らが新聞部、創部以来一番のスクープだからな!」

「わかりました」



 ※次話から流れが大きく、そして暗い方向へと変わっていきます。

 なお、誠に勝手ながら、2日に1話の更新とさせていただきます。

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