第32話 『聖女』VS『悪女』②
「柊さん。あなたが好きです! 俺と、付き合ってください!」
お昼休み、わたくしは体育館裏で同学年の方から告白されていました。
「ありがとうございます。あなたのお気持ち、とても嬉しいです。……ですがごめんなさい。わたくしはあなたの気持ちにお応えすることは出来ません」
そう彼に告げ、私は深々と頭を下げました。
わたくしの心の中には、既に恭平さんがいます。告白をお断りするのはやはり胸が痛みますが、こればかりは……この気持ちだけはどうしても変えられないのです。
「そっか……。わざわざ来てくれてありがとう柊さん」
彼はそう言うと、踵を返して校舎の方に走っていきました。
「…………」
わたくしもいつか、恭平さんにこの想いを告げる日が来る。
それが明日なのか、はたまた数年先の未来なのかは分かりません。
ですが、わたくしが告白して、恭平さんがそれを拒んでしまったら……っ!
駄目ですね。まだ確定していない未来を想像してネガティブになるのは。
恭平さんがわたくしの告白をオーケーしてくれるよう、これから恭平さんと一緒の時間を過ごし、少しでも小泉さんに向いている気持ちをわたくしに向けてもらえるように努力するのみです。
まだお昼休みは残ってますが、この場所で特にすることもありませんし、教室に戻りましょう。
歩き始めたわたくしの耳に、聞き覚えのある男性の叫び声が聞こえました。
この声は……坂木さん?
どうして坂木さんもここに? それに何やら怒っているご様子……ただ事ではないのかも。
わたくしはゆっくり、あまり物音を立てないように坂木さんに近づくと、もう一人、坂木さんとお話している方を目にしました。
やはり、小泉さん。
今の坂木さんがここまで感情を顕にする相手は小泉さんくらいだと思っていましたが、本当に彼女だとは……。
盗み聞きは良くないとわかっているのですが、そこからわたくしはお二人の会話を近くで聞いていました。
結果からお伝えすると、お二人の……いえ、小泉さんの言葉に、わたくしは怒りを抑えきれなくなりました。
昨日のお昼休みに、小泉さんが恭平さんにしたことを聞いたわたくしは、そこでも怒り、小泉さんに直接話をしに行こうと思ったのですが、それを坂木さんに止められました。
放課後のカラオケでも、恭平さんにはわたくしの怒ったところをお見せしたくなくて、小泉さんのことを無理やり忘れて恭平さんとの会話を楽しんだのですが……。
小泉さんは、恭平さんを陥れた共犯の方とお付き合いをしていない?
彼氏面されるのが我慢ならなかった?
挙句の果ては、ペット?
「ふざけないでください!!」
恭平さんを、わたくしの好きな人を、命の恩人をここまで侮辱されて、わたくしは我慢の限界が来て叫んでいました。
許さない……。
あの優しい恭平さんを、遊び半分で深く傷つけたあなたを……絶対に!
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