第14話 『聖女』は協力者を得る
「!」
わたくしの言葉に坂木さんは目を見開いて驚かています。そんなに意外だったのでしょうか?
「……柊さんが本心で言ってる事は伝わった。恭平が好きなのも」
「へっ!?……あ、わ、わたくし、それも言いましたか!?」
恭平さんのことを考えすぎて、気持ちが先走りすぎて本音が漏れてしまいました……。は、恥ずかしいです。
「……ぷっ」
わたくしが赤面し、あたふたしていると、坂木さんが吹き出しました。
「あっはは!まさか柊さんが、『聖女』と言われモテまくっているあんたが恭平を好きだとは思わなかったよ」
「そ、その呼び方はやめてください。わたくしは、わたくし自身はどこにでもいる普通の女子高生ですから」
周りから『聖女』と呼ばれているのも知っていますが、わたくしはそんな風に呼ばれるほど大それた存在ではありません。
ただの、クラスメイトに恋する一人の普通の女の子です。
「……口走ってしまったとはいえ、やはり少々恥ずかしいですね。恭平さんに七年間片想いをしていて、この事を知っているのはわたくしの両親と家のお手伝いさんだけでしたのに」
「七年間?……もしかして───」
「はい。おそらく、それはわたくしだと思います」
坂木さんに当時のことを聞かれたので、わたくしはそれを肯定しました。
ですが当時、坂木さんはあの場にはいなかったはず……恭平さんから聞いたのでしょうか?
「いや、小三の夏休みに、『可愛い女の子を助けた』って聞かされていてさ。あいつがあの女以外の女子をそんな風に言ってるのが当時から珍しくて覚えていたんだけど、まぁ、柊さんなら納得だな」
「可愛いだなんて、そんな……。ですが
あの時、恭平さんに助けていただいた時から、恭平さんを好きになったのですが、どうやら恭平さんはその時の女の子がわたくしだとは思っていないようです」
七年も前の事ですから、お互い成長して顔つきも変化してるからわかります。でも恭平さんはあの時、わたくしの名前も呼んでくださったのに、それを覚えていてくださらなかったのが少しショックでした。
「でもこれ、ワンチャンあると思うぞ?」
ワンチャン?……まだわたくしにも恭平さんが振り向いてくれるチャンスがあるのですか?
「どう言う意味ですか? 坂木さん」
「恭平をあの女の呪縛から解き放った後、あのとき助けた女の子が柊さんだって事を恭平に教えるんだよ。そこから距離を縮めていけば、恭平も柊さんを意識するだろうからさ」
「そ、そんなに上手くいくでしょうか?」
それでお互いの距離を縮めて、わたくしが恭平さんに告白をしても、それでも小泉さんを想う恭平さんにわたくしの想いが届かなかったらと思うと、凄く怖くて一歩が踏み出せない。
「提案しといて何だが、全て上手くいくとは言えない。でも、あの女しか見えていない恭平が、あの女以外の女子を『可愛い』と言っていたんだ。恭平の気持ちが柊さんに向く可能性は充分にあると思う。それとも柊さんは、恭平に振られるのが怖くて行動せず、恭平があの女から解放されて、違う女と付き合うのを指をくわえて見ていられるのか?」
そ、そんなの……。
「い、嫌です!」
恭平さんが小泉さんと一緒にいることを望んでいるから、わたくしは心配しながらも、ただ見ているだけでした。
本当は恭平さんが小泉さんのことばかり見ているのを羨ましいと、小泉さんにずっと嫉妬していました。
その恭平さんが他の女性と付き合ってしまうなど、考えたくもありません!
「わたくしは恭平さんを小泉さんから解放してあげたい。そして、わたくしの初恋を叶えたいです」
わたくしは坂木さんの目を見て言いました。
すると、坂木さんはにっと笑みを浮かべ、わたくしに手を差し出してきました。
「お互いの利害は一致してる。恭平を救えたら柊さんの初恋を叶える手伝いをすると約束するよ。だから、これからよろしく。柊さん」
「は、はい。よろしくお願いします。坂木さん」
わたくしは笑顔で坂木さんの手を取り、握手を交わしました。
「とりあえず今日の放課後、俺は恭平の家に行ってあいつから事情を聞いてくるよ。柊さんは心配だと思うけど、今日のところは普通に過ごしてくれ。間違ってもあの女につっかかろうとしないでくれよ?」
「だ、大丈夫です。そんな暴走はいたしません。恭平さんのこと、よろしくお願いします」
そうしてわたくし達は連絡先を交換し、別々に教室へ戻り午後の授業を受けました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます