第58話 空中戦


『FOX2、ファイヤ!』


F-35Cがミサイルを発射し、敵機を次々に落としていく。

すると、一機の敵急降下爆撃機が反転し、こちら側へと向かってきた。


『なぜ突っ込んでくる……?それが、自殺行為だってことはわかるだろう』


パイロットはそうつぶやきながら、操縦桿を握る手に力を込めた。


『まあいい。これで終わりだ。FOX3!』


F-35Cに搭載された25mmバルカン砲が、敵機を蜂の巣にする。

しかし、それは止まらなかった。


『なにっ!?』


パイロットは驚きの声を上げつつ回避運動をとる。

だが、遅かった。

敵機はF-35Cの右翼に衝突し、それをもぎ取ったのだ。

翼を失ったことで機体はスピンし、高度が落ちて行く。


『クソっ!』


エンジン出力を上げ、その推力だけで機体を持ち上げる。

そして、海面ギリギリで水平飛行に戻った。


『ふぅ……スペード03、片翼を失った。緊急着艦を要請する』

『了解した』


パイロットは機首を上げ、高度を上昇させながら「しなの」へと向かう。


一方、「しなの」では、彼の収容準備を進めていた。


「急げ!早くしろ!!」

「ネットどこだネット!」


その時、F-35Cが着艦コースに乗り、着陸脚を展開。

推力を落とそうとしたが、片方の主翼がないため、減速したら落ちてしまう。

そのため、そのまま強引にアプローチを続けた。


「着艦コースがずれてるぞ!」


管制官がそう言った直後、F-35Cの左翼がアンテナにぶつかり、機体がスピン。

横になりながら飛行甲板にぶつかり、着陸脚を折ってしまう。

F-35Cは胴体着艦、火花を散らしながらネットに引っ掛かり、停止した。


「おい、大丈夫か?」

「俺はな」


***


『FOX2!ファイア!』


敵隊長機を追いながら、F-35Cがミサイルを発射する。

すると、隊長機のキャノピーを開け、後部銃座に乗った敵兵がこう叫んだ。


「スロー!」


すると、ミサイルの速度が一気に下がる。

どうやら、物の速度を下げる魔法のようだ。

パイロットがそう考えていると、機体がミサイルを追い抜いてしまった。


『ミサイルを追い抜いた!?仕方ない……FOX3!』


25mmバルカン砲が火を噴くが、敵機はそれを華麗に避けた。


『マジかよ!』


敵機は後部銃座から銃弾をばらまくが、当たらない。

しかし、F-35のバルカン砲も当たらない。


『これじゃキリがない!』


その時、敵機が急降下。

水面ギリギリを飛びながら、護衛艦「しなの」へと近づいていった。

F-35Cも、水面ギリギリを飛んでそれを追う。


***

~護衛艦「あまぎ」艦橋~

「右対空戦闘、CIC指示の目標ー……主砲、撃ち方はじめ!」


護衛艦「あまぎ」のオートメラーラ単装速射砲が、

横の海面すれすれを飛ぶ敵機を撃つ。砲弾は海に落ち、水柱を上げた。


『スペード04より護衛艦「あまぎ」!殺す気か!もっとちゃんと撃て!』

「こっちだって必死なんだよ!文句言うな!」

『ふざけんなよ!オーバー!』


F-35Cのパイロットは通信を切り、敵機へと攻撃を続ける。

しかし、やはり当たらずにいた。


***

~「しなの」艦橋~

「CIWS!AAWオート!」


「しなの」に搭載されたCIWSが敵機に指向し、

唸るような音を響かせながら20mm弾をばらまいた。

しかし、これも当たらない。


「なんて動きしてやがるんだ……!」


敵機は急上昇し、「しなの」直上へと飛び上がる。

F-35もそれに追従するが、「しなの」のマストに衝突。

バランスを崩し、飛行甲板に止められていたF-35を巻き込みながら墜落した。


「レシプロ機があんな急上昇できるなんて……どんなパワーだよ」


その様子を見ていた木村は、思わずそうつぶやいてしまう。

直後、CICから報告が入った。


『敵機直上!急降下!』

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