新法(しんぽう)

 商鞅は日夜法案作りに没頭し、以下の法案を完成させた。


・五人組十人組の制度を作り、互いに監視させ、誰かが罪を犯せば組の者みな連座させる。

・悪事があっても訴えないものは腰斬ようざんの刑に処す。

・悪事を訴え出た者には、敵の首を取ったと同じ賞を与える。

・罪人をかくまった者には、敵に降伏したのと同じ罰を与える。

・一家に男子二人以上あって、分家しなければ課税を倍とする。

・軍功を上げた者には、その程度に応じて爵位を授ける。

・私闘した者には、その程度に応じて刑に処す。

・食料や織物をたくさん上納した者には、国家事業の労働を免除する。

・働かずして貧しくなった者は、奴隷とする。

・公の一族でも軍功が無ければ、公族の籍を剥奪する。

・身分の等級を定め、田地屋敷の広さ、衣服はこの等級によって決める。

・功績をあげた者には贅沢を許すが、功のない者は、金持ちであっても贅沢は許さない。


 法の執行を人民に信用させるため、商鞅はあることをした。

 雍の南門に木を植え、この木を北門に移動させた者には十金を与えるという布告を出した。

 ただで金をもらうに等しい、あまりにもうまい話を人民は誰一人信じなかった。

 数日後、この木を移動させた者には五十金を与えるという布告を出した。

 人民はまたも信用しなかったが、一人の人物が

 「よし。本当かどうか俺が確かめてやる」

 そう言い残し、木を北門に運び出した。そばで見ていた人民たちはこの人物の後を追った。

 やがて、北門に到着し、木を立てた。

 「ご苦労であった」

 商鞅はその人物に労いの言葉をかけ、布告通り五十金を与えた。


 こうして商鞅が作った法案は公布された。


 だが、この新法には不平不満が続出し、不便だと訴える者が後を絶たなかった。


       ----続----

 

 

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