第23話 炎の都市の扉みつかる

おれは目が覚めた。

なんて気持ちのいい朝だ。

となりを見ると、クレアはすでに起きて朝食の準備をしているようだ。

ナイルはまだ寝ていた。

可愛い寝顔だ。

昨夜のことを思いだしてしまった。

思わずナイルにキスをした。

ナイルの目が開いた。


「アオイさん、おはようございます」

「ああ、おはよう起こしちゃったな」

「いえ」


今日のナイルは一段と可愛く見えた。


「アオイ、起きましたか?」

「あ、ああ」


クレアが部屋に入ってきた。


「朝食の準備ができました」

「ああ、今いくよ」

「あ、ごめんなさいお手伝いしなくて……」

「いえ、いいのですよ」


ナイルはクレアに謝っていた。

あんなことがあっても、ふたりの仲は変わらないんだな。

安心した。

おれは着替えてリビングにいった。


「おはようございます」


ナターシャがすでにきていた。


「おはよう、ナターシャ。今日は早いんだな」

「わたしはいつもと一緒ですが……」

「そ、そうか。おれたちがよく寝たんだな」

「昨日はお疲れだったのでしょう」

「あっ、ああそうだな」


ナターシャ、なにか知っているのか。


「さあ、アオイ座っていただきましょう」

「ああ、そうだな」

「いただきます」

「「いただきます」」

「どうぞ召し上がってください」


相変わらず美味しい朝食だ。


「今日は炎の都市につながる扉が見つかるといいな」

「はい、そうですね」

「花を摘んでから探してみよう」

「「はい」」


おれたちは朝食を終えた。


「クレア、いってくる」

「はい、いってらっしゃいませ」

「「いってきます」」


おれたちは水上カーでナイルの花畑の陸まできた。


「アオイさん、ナターシャさん、よろしくお願いします」

「わかった」

「はい」


おれとナターシャはナイルの泳ぐ姿を見ながらついていく。

ナイルの花畑につくと、それぞれわかれて花を摘み始めるのだ。

だいぶ慣れた。

花を摘むのはもちろんのこと、息もかなり続くようになった。

花は優しく流木からちぎれないようにとるのがこつだ。

花が咲いているものを選ぶようにしている。

つぼみだとつぼみのままで終わってしまうようだ。

なんとも不思議な花なのだ。

陸に息継ぎをしてまた水の中にもどってくる。

その繰り返しだ。

花をある程度摘んだところで、扉を探し始めた。


「アオイさん、見つかりませんね~」


おれは、うんとうなずいた。

ナターシャもうなずいている。

すると一瞬、ある扉から声が聞こえたような気がした。

おれは、近づいてみた。

そして、耳をその扉に近づけてみた。

やっぱり、声が聞こえる。

おれは、ナイルとナターシャにジェスチャーでこの扉から声らしきものが聞こえるみたいなことをしてみた。


「声が聞こえるのですか?」


さすがナイル、その通りだよ。


「アオイさん、では開けてみましょう」


おれはうんとうなずいた。

そして、おれはその扉を開けた。

開けた先には、水の中ではなく街が見えた。

おれはさっそく、扉に飛び込んだ。

そして、続いてナターシャとナイルが飛び込んできた。

そこは、見覚えのある街並みだった。


「アオイさま、ここは……」

「ああ、ここは……炎の都市だ、炎の都市に間違いない」

「やっと、見つけましたね」

「ああ」

「「「やったー」」」


おれたちは手をとって飛び跳ねて喜んだ。


――――


「アオイか?」


え?

だれかがおれの名前をよんだ。

振り向くと、そこにはハルヒがいた。


「ハルヒ!」

「また来てくれたのか?」

「いや、扉をみつけたんだよ」

「そうか、それはよかった」

「これからはまた、前みたいにつながるぞ」

「それはありがたい」

「また、ゆっくり話をしにくるよ」

「わかった」


おれたちは扉に飛び込み泳いで戻った。

そして、扉をナイルの花畑までもってきた。

これで、ドラゴン都市の扉と炎の都市の扉が揃った。

この扉をどうするかが問題だ。

陸にあげるにしてもどこに置くか。

すべての人が簡単に行き来してしまっていいのか。

神野さんに相談しようと思った。

とりあえず、陸にあがった。


「ナターシャ、いまから神野さんに会えるか?」

「はい、連絡してみます」


ナターシャは、すぐに神野さんに連絡をとってくれた。


「大丈夫だそうです」

「わかった」


おれと、ナターシャは神野さんの部屋に向かった。

ナイルはクレアの待つ部屋に戻り、花の販売をすることになった。


――――


ナターシャはまた暗号らしきものを打ち込んで神野さんの部屋に向かった。


ピンポーン!


「どうぞ」


おれとナターシャは部屋に入った。

すると、この間はいなかった女の人が神野さんのとなりに立っていた。

ナターシャは頭を下げた。


「ナターシャ、知り合いか?」

「はい、姉です」

「え? そうなのか?」


姉のわりにはずいぶんとあっさりしているな。


「アオイくんに紹介していなかったか」

「はい」

「ナターシャくんの姉のアリサくんだ」

「アリサです、妹がお世話になります」

「いえ、お世話になっているのはおれの方です」

「そうですか」


ちょっと、ナターシャとはタイプが違うな。


「アリサくん、久しぶりに会ったんだろうからナターシャくんと話をしてきなさい」

「はい、わかりました」

「いえ、わたしは大丈夫です」

「そういわないでこちらにどうぞ」

「あっは、はい」


ナターシャは嫌がっているような感じがした。


「ナターシャ!」


ナターシャは振り向いた。


「ナターシャ、大丈夫なのか?」

「はい、すぐに戻ります」

「わかった」


いままでみたことがないナターシャの顔だった。


「アオイくん、心配しなくても大丈夫だよ」

「はい」

「ところで、夜の方は試してみたかい?」

「あ、はい」

「よかっただろう」

「はい、すごく」

「はっはっは、それはよかった」

「アンドロイドとは思えないくらい性能がいいんでびっくりしました」

「そうだろ、アンドロイドだから無茶なことでもなんでもできるぞ」

「そ、そうなんですか」

「ああ、毎日でも楽しめるぞ」


毎日かぁ~

クレアはいいけど、ナイルが体力持つかな。


「ところで、神野さん」

「どうした?」

「炎の都市につながる扉も見つけました」

「そうか、これで前のように行き来できるな」

「はい、でもどこに設置したらいいのか悩んでいます」

「それはどういうことだ?」

「陸にあげてすべての人が行き来できるようにした方がいいのか、それとも管理者だけが知るべきなのか」

「たしかにそうだな、今のこの水上の都市は前と違って発展してるからな」

「そうなんです」

「……少しわたしに考える時間をくれるか?」

「はい、わかりました。おれも考えてみます」

「頼む」

「はい」


神野さんとの話が終わるころちょうどナターシャがもどってきた。


「遅くなりました」

「いや、ちょうどよかったよ」

「そうですか」

「ああ、戻ろうか」

「はい、かしこまりました」


なんか、ナターシャが少しかしこまっているように感じた。

おねえさんとなにがあったんだろう。

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