第14話 水中花が完売だ!

おれはうっすらと覚えている。

花が引っかかったあの四角いものは扉だった。

その周りにもたくさんの扉があったような気がする。


「ナターシャ、ナイル! とりあえず秘密の扉は改めて確認をしよう」

「はい、かしこまりました」

「はい」

「部屋にもどって花を移して販売しよう」

「「はい」」


おれたちはマンションにもどった。


「クレア、ただいま」

「おかえりなさいませ」


おれはいつものようにクレアに抱きついた。


「どうかされたのですか?」

「ん? なにが?」

「いえ、なんだか今日はいつもより疲れているようだったので」

「そうか?」


おれは溺れたことをだまっていた。


「クレアさん、アオイさまは溺れてしまい大変なことになっていました」

「え? そうなのですか?」


クレアはおれをみて心配そうにしている。


「もう大丈夫なのですか?」

「ああ、もう元気だよ」


クレアは安心したようにおれに抱きついた。


「クレア……、もう心配いらないよ」


クレアはしばらく抱きついていた。

アンドロイドでもこんなに心配してくれるんだな。

こうなるともう、普通の人間だな。


――――


「クレア! いまから花を移して販売しようと思う」

「はい、それはいいですね」

「綺麗な花をたくさん摘んできたんだぞ」

「そうですか、それは楽しみです」


おれは綺麗な花をクレアに見せたかった。


「ナイル、花をだしてくれ」

「はいわかりました」


ナイルは画面から花をとりあえず10個だした。

テーブルの上が花畑のようにカラフルになった。


「クレア、どうだ? 綺麗だろ」

「はい、すごく素敵です」


クレアの目がキラキラしていた。

クレアも女の子なんだな~


「ガラスの鳥かごをだしてくれ」

「はい」


さっそく、鳥かごに流木つきの黄色い花をいれてみた。

そして画面から、入れ物にはいった水をとりだした。

ゆっくりと鳥かごに水を流しこんだ。

入れ物から水もこぼれない。


「すごく、いいんじゃないか」

「はい、すごく素敵です」


ナイルが嬉しそうだ。

クレアもナターシャも喜んでいる。


「よさそうだな」

「はい」

「これをいくらで売るかだ」

「ナターシャどう思う?」

「そうですね、花の相場ですとひとつ200といったところでしょうか」

「そうなのか」

「はい、でも水の中に入っているのでもっと高くしてもよろしいかと……」

「クレアは?」

「わたしも高くしていいかと思います。ガラスの鳥かご代もありますので思いきって1000ではどうでしょうか?」

「えええええええ!! 1000ですか?」


ナイルが驚いていた。

おれには1000がどのくらいすごいことなのかまったく見当がつかなかった。

しかも単位は何なんだ?


「なあ、1000ってすごいのか?」

「は、はい」

「どのくらい?」

「わ、わたしの1か月の収入くらいです」


とてもわかりにくいがこれが売れたらナイルはとても裕福になるってことだけはわかった。


「なんとなくわかった」

「ナターシャ、1000でいいと思うか?」

「はい、ここは賭けにでてもいいと思います」

「よし! 1000で出してみよう」

「「はい」」

「はい、よろしくお願いします」


おれたちはガラスの鳥かごに石のついた花や流木のついた花をいれた。

そして水をゆっくりいれた。

これを25個用意した。


「そろそろ、一度販売してみよう」

「はい、そうですね」


ナイルは画面に鳥かご水中花を入れ、金額を打ち込み販売ボタンを押した。


「売れるか緊張するな」

「はい、すごく緊張します」


ナイルはすごく緊張していた。


「クレア、休憩しながらケーキでも食べようか」

「はい、ただいま用意いたしますね」


おれはナイルの緊張をほぐそうと休憩することにした。


「ナイル、大丈夫だよ」

「はい」

「ナイルさん、そんなすぐには売れませんから気長に待ちましょう」

「はい、そうですね」


販売してから、3分たっただろうか……。


ピコッ!


ナイルの画面から音が聞こえた。

ナイルが画面をみた。


「わぁ!」


ナイルが大きな声を上げた。


「ナイル、どうした?」


おれはナイルの画面をのぞき込んだ。

すると、花が売れていた。


「ナイル、よかったな」

「はい、うっ……れしい……ですっ」


ピコッ!

ピコッ!

ピコッ!


音が止まらなかった。

画面をみると、3分前にだした25個すべてが完売だった。


「ナイル、完売だ!」

「はいっ」

「ナイルさん、よかったですね」

「アオイ、すぐにのこりの75個も用意して販売しないと……」

「そうだな」


おれたちはすぐにとりかかった。

途中、休憩しながら楽しく作業した。


ふぅっ。


「おわった~」

「はい、画面にいれて終わりです」


25個できるたびに販売したが、そのつど5分もしないうちに完売していた。

そして最後の25個を販売した。

そして、完売した。

100個すべて完売だ。


「みなさん、ありがとうございました」

「ナイル、楽しかったな」

「はい」


ナイルの笑顔がすごく輝いてみえた。


「明日も花を摘みにいって販売だな」

「あしたも手伝ってくれるのですか?」

「あたりまえだよ」

「ありがとうございます」


おれはこれだけ稼げたらこのマンションに住めるのか気になった。


「なあナターシャ、この稼ぎでナイルはこのマンションに住めるようになるのか?」

「そうですね、この調子で7日完売したら住めるようになるでしょう」

「そうか、7日か。ナイルこのマンションに住めるな」

「はい、うれしいです」


ん?

ナイルの顔がうれしそうではないぞ?


「ナイル? うれしくないのか?」

「い、いえうれしいです」

「そうか? なにかあるのか?」

「……、わたしアオイさんとここに一緒にくらしたいです!!」


えええええええええ!!


ナイルは急に大きな声で一緒にくらしたいといった。

おれは嬉しかった。

でも、クレアはアンドロイドだからいいがナイルは生身の人間だぞ。

なにか間違いが起きてしまったらどうするんだ?

おれは我慢できるのか?

我慢しなくていいのか?

わわわわわわわ!!

わからなくなってきた。


「おれはかまわないよ」


んんんんんんっ、かっこつけて言ってはみたものの本当に大丈夫なのか。


「ほんとですか?」

「クレアはどうだ?」

「わたしはナイルさんはもう妹のように思っていましたのでうれしいです」

「そうか」


クレアは大丈夫なんだな。


「ナイル、一緒にくらそうか」

「はい、ありがとうございます。よろしくお願いします」


ナイルはすごくうれしそうだ。

ふとっナターシャをみた。

なにかいいたそうだ。


「ナターシャ、どうした?」

「ナイルさんがここに住むなら、わたしも……」

「ん? ナターシャなんていった?」


ナターシャが話した声が小さくて聞こえなかった。


「わたしも一緒に住みたいです!!」


ええええええええええええええええ!!

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