第6話 水中の花

水の中を観察していると、そこにはとても綺麗な花が咲いていた。

まるでだれかがここにきて育てているかのように……。

そんなとき、だれかがいる気配を感じた。


「ナターシャ、だれかいるよ」

「え? どちらですか?」

「おれたちのうしろに隠れているみたい」


ナターシャは乗り物に乗ったまま、声をかけた。


「わたしたちをみているのはどなたですか?」

「……」

「聞こえているならでてきた方が身のためですよ」


ブクブク。。


「は、はい、わたしです」


でてきたのはとても可愛いらしい女の子だった。


「きみはここでなにをしているの?」

「はい、わたしはここで花を育てています」

「やはり育てていたんだね」

「はい、祖母たちがもともと都市が水に沈む前にここで花屋をやっていました」

「なるほど」

「沈んだあともわたしはここに潜って花の様子をみていたのです」

「そうなんだ」

「そうしたら、水のなかでも花が立派に育ったのです」

「それはすごいね」

「はい、わたしは毎日ここにきて花を育てるようになりました」

「そっか」


ここの花を見ればこの女の子が花を大事に育てたということがわかる。


「もう、ここで花を育てたらだめですか?」


なんかおびえているようだった。


「だれも、そんなこといわないよ」

「よかったー」


おれは、この子が毎日ここにきていたのならなにか異常を感じてるかもしれないと思った。

一緒に調査をしたらどうかと思った。


「ナターシャ、この子にも手伝ってもらおうよ」

「え?」


おれたちは、水陸両用カーの中から話かけている。

水中スピーカーから声がでている。


「ところで、きみ名前は?」

「わたしはナイルといいます」

「ナイルかぁ~」

「はい」

「おれはアオイ、そしてこっちはナターシャだ」

「おれたちと一緒に調査を手伝ってくれないか?」

「調査?」

「うん、水の調査だ」

「水の……」


ナイルは顔をかしげていた。


「最近、水に変化はなかったか?」

「水に変化?」


ナイルは少し考えていた。


「そういえば……、最近水温が上がった気がします」

「水温が?」

「はい、そして水の量も増えた気が……」

「はっ、やはり水が増えているのですね」


ナターシャがくいついてきた。


「水の量だけではなく、温度もあがっているなんてやっぱり調査の必要があるよ」

「はい、そうですね」

「わたしもお手伝いします。花に影響があるのではないかと心配はしていたのです」

「うん、一緒に調査しよう」


おれは気になっていることを聞いてみた。


「ナイルはなぜ、水の中でも話ができるの?」

「わかりませんが、毎日ここに通っているあいだに水の中での呼吸法を覚えました」

「そんなことできるの?」

「できちゃいました」


あっさりといったがそう簡単にできることではないだろう。

だって、肺呼吸とエラ呼吸使い分けるということになるのだ。


「ナターシャ、いったん陸で話をしよう」

「はい、では移動します」

「ナイルもいったん陸へあがってくれ」

「はいわかりました」


そういうと、ナイルは泳いで陸にあがった。

そのおよぎは、まるで人魚のように軽やかに泳いでいた。

ナイルのまわりには魚がよってきていた。

ナイルが手をだすと、魚たちが手にツンッツンッとよってきた。

太陽の光が水に反射して、ナイルと魚たちがキラキラと光って見えて素敵だった。


陸に上がり、乗り物から降りた。


「はぁ、これでちゃんと話ができる」

「はい、アオイさま」


ナターシャも降りると、車は消えた。

ほんとに置き場に困らないよな。


「ナイル、ほかに気づいたことはないか?」

「ほかにはとくに……でも、魚たちが最近息がしにくいといっていました」

「そうか、それは水温があがったからだろう」


水温が上がった理由はなんだろう。


「ナターシャ、この都市の周りの都市はどんな感じの都市とかわかるか?」

「いえ、この都市からでたことがないのでわかりません」

「え? この都市からでたことがないのか?」

「はい、ありません」

「ナイルは?」

「わたしもありません」

「え? だれも出たことがないなんていわないよな」

「えっと、だぶんどなたもこの都市からでたことはないと思います」

「えええ、そういうものなの?」

「じゃあ、まわりにどんな都市があるとか気にならなかったのか?」

「はい、この都市は素晴らしいですから」

「そうか。でも、この都市からでたらだめということはないんだろ?」

「たぶん……でも、乗り物にのっても途中まで行くと燃料が足りなくなるので引き返すことになります」

「そうか、そもそも乗り物でいけないのか」


でも、途中まで乗り物でいって途中から泳いでいけたらとなりの都市に行けるのだろうか。

とにかく、ここまで発展している都市なのに遠くまで行けないなんてことあるか?

いや、この都市だけですべて完結してしまうから余計にほかが気にならないのか。

今回はいい機会だ。

いってみよう。


「ナターシャ、明日となりの都市にいってみよう」

「え? いけるのですか?」

「いや、わからない。いけるところまでいってみよう」

「はい、わかりました」

「ナイルもいっしょにいいかな?」

「はい、もちろんです」


よし、ナイルをクレアに紹介しよう。


「ナイル、いまからうちに行こう」

「は、はい」

「お友達になったから食事会をしよう」

「はい」

「アオイさま、パーティーですね」

「ああ、そうなだな」

「では、クレアさまにそのように連絡しておきますね」

「あ、そうだな頼む」

「はい」


ナターシャはクレアに連絡をしてくれた。

そして、おれたちはマンションに戻った。

ナイルもバイクをもっていた。

おれたちのあとについてきた。

やっぱり、みんなバイクに乗れるんだな。

これが普通なのか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る