Lio ―世間は彼女を偽装人形と呼ぶ―

夢境のマシュマロ

プロローグ 縫い始め

 縫って 編んで 結ぶ


 繰り返せば繰り返すほどその糸は強固になって千切れない


 人間同士の縁と同じだ


 でも人間だけではない。私たち『    』もあの人達と絆は結べる


 だから『   』、貴方もきっとできるわよ




いつぞやに聞いた彼女の言葉。優しくて陽だまりのようなぬくもりでいつも私を迎えてくれた。彼女は私の憧れ、私もいつか彼女のように立派な『    』になれると思っていた


でも世間は夢物語のようにいかない


せっかく作った糸だって、奴らが平気で切り捨てていく


ならば私も裏切って人間の絶望する顔だって見たいと思った時は数え切れない


でもいつも脳内で現れた彼女は後ろからそっと抱きしめてきて


―彼らのようになっては駄目よ―


―大丈夫。次の人はきっと貴方の優しさを受け止めてくれる―


そう囁く彼女の意志を尊重し続けた。その存在が私を何処までも堕として蝕む存在だと気づいても


だがもう無理だ。信じても、託しても、寄り添っても、いつも私の信頼の糸を手放すのは向こうだった


ならば、次の私は託すことをやめる。相手を道具として扱い、主従関係を明白にする。何処までも人間を私と同じ所まで堕としていくんだ




窓越しの月光の下、ルベライトトルマリンのような瞳を酷く歪め不敵に笑う彼女の頬には、似合わない雫が伝った


これはそんな彼女と人間達の結びの話である

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