第70話 4人で
「理人君…何でフルールの時だけ凄く楽しそうなのかな?」
「理人…なんで私の時と笑顔が笑顔が笑顔が…何で違うのよ…ねぇ何故?」
綾子も塔子も…何だか怖い。
後ろに般若が見えるのは気のせいだろうか?
フルールは『私は知りません』って顔でそっぽを向いている。
命懸けでも助けてくれる。
そう言った筈のフルールが助けてくれない。
助けを求めてフルールを見ると、少し笑っている様に見える。
あれっ、こっちに歩いてきた。
助けてくれる気になったのか。
「仕方、ありませんわ…だって理人様が心から愛しているのは私だけなのですから、差があるのは当たり前ですわ」
「「くっ…」」
不味いな、2人の顔が笑ってない。
これは完全に怒っている顔だ。
そろそろ、本当の事を話した方が良いかもしれないな。
「塔子も綾子も聞いて欲しい…実は」
俺は『自分の事について』都合の悪い部分を伏せて話した。
流石に心まで奪った事は言えない。
「そんな事があったの?」
「そんな、大変な状態だったんだ。大丈夫?」
良かった、内緒にしていた事を怒ってなさそうだ。
「まぁな」
「しかし…酷い、私そんな事になるなんて女神に聞かなかったよ」
「私だって、てっきり魔王さえ倒せば帰して貰えると思っていたわ、こんなの詐欺よ、詐欺」
「俺もそう思う!何のリスクも説明せず、テラス様も『誘拐犯』そう言っていた。それで二人ともどうする?」
綾子も塔子も貰ったジョブは素晴らしい物だ。
このままの方が幸せな可能性もある。
俺は『祭主』になった。
神道で言うなら頂点。
此の世界の女神教でいうなら、教皇みたいな存在だ。
だが、それは『他に居ないから』に過ぎない筈だ。
そうじゃなければ俺みたいな若輩者がこの任につける筈が無い。
そしてフルールが大宮司…これも破格だ。
少なくとも『祭主』『大宮司』も通常の神社には居ない。
普通の神社の最高責任者は宮司だ。
裏切者で犬以下とテラスちゃんが言っていた塔子や綾子に『宮司』の地位を与える。
この意味を知らなければならない。
簡単な事だ。
これは試練なのだ。
これは他に例えるなら。
『キリスト教国のローマにたった4人で神道を広めろ』
『何万という構成員を抱える大きなヤクザにたった4人で攻めこめ』
これに近い。
新興宗教なら『教主 副教主 幹部2人』だからこその役職だ。
「どうするって…理人くん」
「何が言いたいの?」
「俺は2人を日本人に戻して欲しいとテラス様に頼んだ。その条件が俺が『祭主』になってフルールが『大宮司』になり綾子と塔子が『宮司』になってこの世界にテラス様の教えを広める事だった。これを行うと言う事は、敵は魔族でなく『女神になる』そして『それを信じる人々』も敵だ。好きな方を選んで良いよ。このままで暮らし女神の加護の元に魔族と戦い、此の世界の英雄になるか? それとも俺と一緒に『女神』を敵に回すか。この場合は最悪同級生と戦う事になる可能性もあるかも知れない。好きな方を選んでくれ、俺を選ばなくても恨んだりしない」
綾子と塔子は…本来なら女神の元魔族と戦った方が幸せな可能性が高い。
態々捨てる必要も本来は無い筈だ。
だがそれでも…一緒に戦って欲しい。
俺はそう思う。
俺はズルい…決して拒絶されないのを知っていて敢えて聞くんだ。
最低だ。
「私は元から女神が大嫌いなのですわ。あの高慢ちきな顔が歪むのが見れるのかと思うと凄く楽しいのですわ。それに理人様の敵なら全員殺す女、それが私ですわよ」
「私は凄く怖いよ!だけど理人君の敵になるのは死んでも嫌だから『宮司』になるよ」
「そうね、聖女の地位は捨てがたいけど、理人に比べたらゴミみたいな物だから良いわよ」
「良かったありがとう」
「良かったですわね。これで私は2人を殺さなくてすみましたわ。大体、理人様は自分の事を考えたら、この話に乗らなくて良かった筈ですわ。ですが2人の為にこんな無茶な事をしたのですわね。そこ迄して貰っても『女神』の側に着くなら、最初の敵としてお2人を殺すつもりでしたわ」
そう言いながらフルールはスカートから手を出した。
もしかしたら、手で武器か薬品を握っていたのかも知れない。
◆◆◆
その後、俺は簡易的な儀式をしてフルールを大宮司、2人を宮司にした。
その後テラスちゃんに祈ったら、いつもの様に姿を現さず、声だけが聞こえてきた。
『これからは惑わされる事無く精進するように』
その一言だけ声が聞こえて来た。
儀式が終わり…祈るようにしてお店に入ると…コンビニに入れた。
綾子と塔子は驚き喜んで片端からお菓子をカゴに突っ込んでいった。
そのまま4人でフードコートで楽しく話しながらお菓子を食べた。
久々に罪悪感を感じないコーラは凄く美味しく、30本買ってアイテム収納に突っ込んだ。
『祭主』になって良かった…本当に俺はそう思った。
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