第16話 戦う選択しかない!
俺と平城さんは座学が終わり、訓練場に行くと、そこには血塗れの大河が立っていた。
俺と目が合うと大河は爬虫類の様な目で俺を見るとニヤリと笑った。
近くを見ると大河の周りには沢山の大怪我している騎士が居る…いや大怪我なんて生温い…まるで地獄の様な光景だ。
流石に黙っていられない。
このままじゃ死人がでてしまう!
「おい大河いい加減にしろ! 貴様狂っているのかーーーっ」
俺は騎士たちの傍に駆け寄ると大きな声を出す。
「理人熱くなるなよ! 良いか俺たちは魔族と戦いやがて魔王と戦うんだぜ! お前みたいな無能と違ってな…この城を出たら『命懸け』なんだよ!お前みたいなお遊びじゃないんだぜ!」
「それがどうしたと言うんだ!此処まではやり過ぎだ…流石に手足まで斬る事は無いだろうが..この状態じゃ…」
どう考えても横たわっている騎士たちが今後真面な生活が出来るとは思えなかった。
「ああっ騎士として終わりだな! だが、この程度で壊れるような奴は俺は要らねーよ! この程度で動けなくなる奴は魔王討伐じゃ役に立つ訳ねーからな!」
周りの人間の様子が可笑しい。
何故、同級生が誰も動かない。
幾らなんでもこんな状態の人間を放置するような奴らじゃなかった筈だ。
それに此処には担任の緑川先生が居る。
召喚された我々の責任者は緑川先生だ、担任でもあった先生に頼るべきだろう。
「緑川先生はこれで良いんですか?自分の生徒の大河がこんな事していて何故止めないんですか!」
「俺を巻き込むな…」
えっ!?今、何を言ったんだ!『巻き込むな』そう聞こえた気がするがそんなわけないよな!
俺の聞き間違いの筈だ。
「先生?」
「俺を巻き込むなって言っているんだ! この無能がーーーっ、此処は日本じゃなければ高校でも無いんだーーっ。俺はお前達の教師じゃない。ただの人間なんだぞ、人に頼るなよ! 自分で何でも解決しろよ!」
どうしたと言うんだ?
俺には、緑川先生がこんな事を言うなんて信じられない。
「先生?」
「もう先生と呼ばないでくれ…」
そう言うと緑川先生はその場から、そそくさと立ち去ってしまった。
周りを見ると同級生全員が目を伏せた。
何があったのか解らない。
だが、誰もこの状況で動こうとしないは確かだ。
俺は騎士達に近づいた。
良かった『まだ死んではいない』ようだ。
死んではいないが…全員が大怪我をしていた。
そして、その騎士の中にリチャードが居た。
「リチャードーーーーっ」
「よう、理人か…あはははっ負けちまった」
か細い声で俺の声にリチャードは答えた。
「もう喋るな…いまヒーラーを呼んでくる」
俺がみたリチャードは右腕、左足が無かった…しかも長かった髪も切られていて顔には大きな傷があった。
この状態で普通に話せる…それだけでも騎士の凄さが解る。
「ああっ」
返事をすると、リチャードはそのまま意識を失った。
「平城さん、今直ぐヒーラーを呼びに行こう」
「うん」
平城さんの手を取りその場から離れようとしたが…
「おっと、理人ぉー-っ!此処は戦場と同じだ…此処を通りたかったら俺を倒して行くんだな」
「そうか…解ったよ!お前を倒せば行って良いんだな!」
「倒せるならな!」
「そうか解ったよ」
「おい、工藤…今から俺は理人と決闘をする、此奴が逃げない様に平城を押さえつけておけ」
「いやぁぁぁ工藤君、何するの?」
「工藤、お前どうしたんだよ? 何で大河に従うんだよ、お前はそんな奴じゃなかった筈だ」
「すまない…本当にすまない…」
「お前、何を言っているんだ」
工藤は剣道部で正義感が強い男だった。
それが何でこんな奴に従うんだ。
「すまない…」
俺と工藤の会話を聞きながら、大河は大笑いをする。
「あははははっ!もうこの城には同級生も含んで、お前の味方は誰もいねーよ」
同級生は全員敵になったようだ…その理由は解らない。
だが、これで戦わないという選択は俺には取れなくなった。
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