第一章 学園入学編

第1話 プロローグ



 未だ幼さがある一人の少年が起床する。空はまだ薄明、今が冬の終わり頃ということを考えれば五時半〜六時くらいだろうか。外は寒く、家の中に冷気が侵入してくる季節だ。こんな時間に起きるくらいなら、布団に潜って寝ていたいのが、普通の人の考え方だろう。しかし、彼は起き、身支度をしている。ここからでも彼が普通の少年ではないことが感じ取れるだろう。また、彼が着ているものもそうだ。彼のことを知らない者、特に貴族あたりが見れば、庶民の彼が着るには年齢的にも不相応と言われそうな服装――執事服だ。それもキレイで高い地位にいると思われる。


「さて、でもやりますか・・・。」


 そこからの作業は素早かった。自分の部屋を軽く掃除をし、食堂で眠気覚ましのコーヒーを作ってから、同僚達を起こしに行く。執事長からの点呼が始まるまでに使用人達の部屋を確認して周り、まだ寝ている者がいないか確認し、その結果を執事長に伝える。点呼後は皇城の廊下にあるカーテンを開ける。その後、窓ガラスや手すり、床など至る所を担当ごとに分かれて掃除をする。

 そして六時半過ぎ、一部の執事達は仕える主の元へと向かい、起こしに行く。それは彼も同じだ。ただし、彼らと少し違うのは、ティーポットやカップなどを乗せたワゴンを持っていくというところだろうか。彼はとある部屋に入り、その部屋のカーテンを開け、自身が仕える主を起こそうとすでに定型文となった言葉を口にする。


「朝ですよ、シエル皇女殿下。」

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