Evol.040 種の無い種明かし

「……落札者の方はお帰りの際にお支払いと商品のお受け取りをお願いいたします。これにて本日のオークションを終了とさせていただきます。皆様ご参加いただきまして誠にありがとうございました。お気をつけておかえりくださいませ」


―パチパチパチパチ……


 司会の老紳士が閉会の挨拶をして空間は拍手で包まれ、今回のオークションは終わりを告げた。


「昨日と今日で稼いだ金貨を全部使ってしまったな……」


 たった数時間で金貨二七〇○○枚という、雑魚だったころの俺では考えられないくらいの大金を使用してしまった俺。


 あまりに大金をあっさりと使ってしまったせいで、金銭感覚が狂ってしまいそうだ。


 しかし、昨日の段階で一二○○〇枚程度しかなかった俺がなぜそれだけの金貨をもっていたのかと言えば、種明かしは簡単なことだ。


 それは、今日も昨日と同じようにガマグッチが大量発生したため、昨日よりも少し多い金額を稼いでいたから。そのおかげでなんとかあれ程に釣り上がった金額のアイテムバッグでも買うことが出来たわけだ。


 まさかギリギリになるとは思わなかったけどな。


「あれほどの機能のアイテムバッグは中々出品されないので金貨二四〇○○枚で購入できたのは魔導書と同じように運が良かったと思いますよ」

「確かにな」


 容量が計り切れない。時間停止機能付き。重量も変わらない。という三拍子そろったアイテムバッグは今後の探索でさぞ役に立ってくれることだろう。


 後は治癒魔術の最下級と下級を購入すれば、ソロでもかなり快適で安全な探索者生活が送れるのではないだろうか。


「おそらく他の方々が別の商品に気を取られてしまったことが大きいのではないでしょうか」

「それはありそうだな。最後までくらいついてきた相手もなんか呟いてたし」

「ですね」


 今回はステラさんが見る限りかなり豊作のオークションだったらしい。だから、彼女の言う通り、そういうこともあるだろう。


 俺は元々アイテムバッグ狙いだったからあまり散財せずに済んで上手いこと購入することが出来たわけだ。


 つくづくツイてるなと思った。


「お客様こちらへどうぞ」

「さて、俺達もさっさと支払いを済ませて念願のアイテムを拝ませてもらおう」

「そうですね」


 俺達はやってきた侍女服をきた女性に従い、商品の受け取り場所へ向かった。




「……お支払いを確認いたしました。それではこちらが商品となります。アイテムバッグは今所有者が設定されていない状態となっております。魔力を流しますとお客様の所有者設定が完了いたします。そうなりますと、他の人間が使用できなくなります。これが解除されるのは使用者が亡くなった場合のみとなっております」

「分かった。ありがとう」


 落札者用の個室に案内された俺達。


 支払いを済ませ、オークショナーから説明を受けてアイテムバッグを手に入れた俺は、見た目は只の肩掛けカバンであるアイテムバッグに魔力を流し込んでみた。


 アイテムバッグは少し淡い光を放った後、すぐに元通りに戻った。


 それ以外は特に変わったところはない。


「これを入れてみるか」


 設定が完了しているか分からないので、俺は受け取ったばかりの中級治癒魔法の魔導書を入れようとしたら、魔導書はバッグの入り口に近づけた段階で消えてしまった。


 どうやらこれで中に収納されたようだ。


 俺は取り出そうとしてみると、頭の中にアイテムバッグ内にあるアイテムが思い浮かび、それを選んでみると外に急に姿を現した。


 問題なく使えている。どうやらこれでオッケーらしい。


「はい、それで所有者設定は問題ないかと思います。本日はご参加いただき誠にありがとうございました。また、次回のオークションが開催される際はこちらからご連絡させていただきます。ご都合がよろしければぜひご参加ください」

「ああ。その時はよろしく頼む」


 受け渡しも終わったので挨拶も早々に会場を後にした。


 そして、二人で歩き出して少し経った頃、


「おい、お前達。ちょっと待て」


 招かざる客が俺達を遮るように姿を現した。

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