復讐


土の国 グランド・マリア



闘技場、甲高い音が響き渡った。


南門から猛スピードで入ってきたクロエは、膝をつくアインを飛び越えて両手持ちショートソード、縦一線の斬撃を放っていた。


それはジレンマのドス黒い右拳と打ち合ったことで、凄まじい金属音が周囲に広がったのだった。


「セカンド!!」


「クロエか!?ほう、デカくなったな」


ジレンマの笑みが、さらにクロエを腹立たせる。

より一層の力を入れたクロエだったが、ショートソードにはヒビが入った。


「クソがぁぁぁ!!」


「この程度の"闘気"で俺に向かってくるのか!!笑わせるな!!」


そう言って、ジレンマは右ストレートを振り抜く、ショートソードは粉々に砕け、クロエは大きく仰け反った。


「ぐぅ!」


「おとなしく地上で隠れてればいいものを……。"娘"だろと、もはや生かしてはおけん!!」


ジレンマはさらに一歩踏み込み、右の片翼を振るおうとしていた。


「私は貴様を……絶対に許さん!!黒衣武装ぉぉぉぉぉぉ!!」


クロエの体全体が黒く覆われ、スマートなスーツとなる。

そして髪の色が銀髪へ変化し、目元にはバイザーも構成された。


ジレンマは右の片翼を右腕に巻き付け、振るうが、クロエはその"翼の斬撃"を左脚で蹴り上げて軌道を変える。

見えぬ斬撃は天へと放たれ、炎で燃え盛る天井へ当たった。


クロエは、その勢いで回転し、右回し蹴りをジレンマのみずおちに叩き込む。


ジレンマは数メートル吹き飛び、闘技場中央へ追いやられた。

受け身を取り片膝をつくジレンマに、一瞬で到達するクロエ。


「これが私の"闘気"だ!!受け取れぇぇぇぇぇ!!」


そこにクロエの右膝蹴りが直撃する。

右膝は顔面を捉えていたが、ジレンマはクロスガードしていた。

凄まじいスピードで放たれた膝蹴りはジレンマの腕の骨を簡単に砕いた。


しかし、まだ猛襲は続く。


クロエは着地後、左脚の飛び蹴り上げで、ジレンマのクロスガードを弾く。

滞空中、仰け反ったジレンマのあごに右脚の蹴り上げ……


宙を見たジレンマの顔面に、その勢いのまま右脚のカカト落としを叩き込む。

ズドン!!という轟音と共に、ジレンマの立つ場所の四方八方にヒビが入り、やがて、それは円形上のクレーターになった。


クロエは、遊ぶ左脚でジレンマの胸を軽く蹴ってバク宙して後方に着地する。


「これで首を飛ばして終わりだ!!」


クロエは自分の心臓が破裂する覚悟で、"音速の攻撃"に出た。


"右回し蹴り"


それは一瞬にジレンマの左こめかみへ到達する。


しかし、その攻撃をジレンマは左腕を上げショルダーガードしていた。


「なんだと!?」


「お前の闘気が一番、弱々しいぞ……クロエ」


そう言うと、ジレンマはクロエの足を右手で掴み、回転しながら、その体をドン!と地面に叩きつけた。


「ぐはぁ……!!」


あまりの衝撃にクロエの体がバウンドして宙に浮く。


ジレンマはクロエの顔面に右手を伸ばし掴むと、握力で締め上げる。

さらに、そのまま地面に押し当てるように叩きつけた。


「このまま頭ごと潰してやる!!」


その握力によって目元のバイザーは砕けて壊れ、黒衣も剥がれていく。

クロエは、もがき苦しむが、ジレンマは力を緩めることは無い。


「うぐぁぁぁぁぁぁ!!」


「死ねぇ!!」


クロエの顔の骨が軋む。

頭は地面にめり込んでいき、潰れる寸前だった。


瞬間、ジレンマの顔面に衝撃が走る。

顔は、ドン!という音と同時に打ち上がり、宙を見る。

動揺したせいか、クロエを掴んでいた手を離していた。


「なんだ!?」


ジレンマは不意の攻撃で後方によろけるが、すぐに状況を確認するため正面を見る。


そこには、右のアッパーを振り抜く男の姿があった。


「貴様は……」


「てめぇの闘気はその程度かジレンマ……生きて帰れると思うな!!」


「アルフィス……ハートル!!」


アルフィスとジレンマはお互い鋭い眼光で睨み合う。

その時間は一瞬ではあったが、2人は凄まじい長さに感じていた。

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