キック・ジョー
久しぶりに夢を見た。
俺が中学の時だった。
隣町に凄い強い奴がいると噂があったので、学校の帰りに、そいつがよく喧嘩してるという公園に行ってみた。
するとそいつは、ちょうど喧嘩中のようで、五人に囲まれていたが、ものの数分で全員ボコしてしまった。
「なんでこんなに弱いんだ?」
そいつの口癖だった。
日影譲治(ひかげじょうじ)
そいつは色んな格闘技、空手、柔道、剣道、ボクシングなどやっていた。
特に使っていたのは蹴りを主体にした戦い方で躰道とキックボクシングを融合した我流喧嘩拳法だと本人は言っていた。
その戦い方から付いたあだ名は"キック・ジョー"だった。
俺はジョーとは一度、この日だけ戦った。
夜まで公園で喧嘩したけど勝負がつかず、二人して疲れたから帰るかと、一緒に飯食って帰った。
俺にとって初めての引き分け。
それ以来、なにかあると待ち合わせして飯を食べるだけの友達になったいた。
ある日、ジョーの家に呼ばれ行ってみた。
ジョーの家は俺の家と違って金持ちで、家もめちゃくちゃデカかった。
ふと俺は、"なんでこんなやつが喧嘩ばっかしてんだろ?"と思った。
そして夜までジョーの家でゲームして冷蔵庫の中を漁って二人で騒ぎまくった。
騒ぎ疲れて俺は夜の11時頃に帰った。
帰ってる途中で俺は気づいたのだ。
こんな時間になるまで親が帰ってこないことに。
ジョーと出会って半年くらい過ぎたある日、ジョーとの待ち合わせで、いつもの公園にいると、八人組の大学生くらいの男に絡まれた。
俺はムカついて、そのうちの一人を殴ると、一斉にそいつらが俺に殴りかかってきた。
流石にあの時は死ぬんじゃないかと思った。
そこに遅れて来たジョーが割って入り、人生で初めての共闘をしたのだった。
俺は今まで誰とも組んだことは無いが、仲間がいることに安心感を覚えた。
ジョーは俺の動きに合わせてくれて、俺が攻撃を大振りして隙を作ってしまった時など、とっさに蹴りでフォローしていた。
ジョーは俺が戦いやすいように、後ろで俺と相手の動きを見て、的確に攻撃し、他の奴が俺に手を出してこようとしたら蹴りで牽制して追い払う。
完全に一対一ができるように展開を組み立てていたのだ。
俺は戦いながら、その動きに感動してしまった。
_________________
別れとは突然訪れるものだ。
大学生との喧嘩の後、ジョーの親が離婚したとのことで、ジョーは母親に引き取られ、引っ越してしまった。
俺はこの喧嘩以来、ジョーには会ってない。
そして、ジョーは母親とは上手くいかず、家出して行方不明になったと風の噂で聞いた。
あの時からずっと俺はあの共闘が忘れられなかった。
正直、一人で戦っている時よりも、めちゃくちゃ気分がよかった。
もし、俺が違う誰かと共闘することがあれば、ジョーのような戦い方をできるようになりたい。
そうずっと思っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます