第33話 失言
ようやく心を開いてくれそうだったのに、まさかの爆裂が四つも追いついてくるとは……
「なんだ、あのべらぼーな発言をする女たちは」
「って、ちょい待ち! あんた、あの人……」
「ん? わ!? え、ええ!?」
「トワレ姫様やん!?」
ただでさえ存在感抜群すぎる四人だというのに、その中の一人がこの国のお姫様なんだから、そりゃ驚くよな。
「え!? 姫様!?」
「うそ、と、トワレ姫!?」
「いやいや、待て、あの方がトワレ姫だとして、先ほど何と言った!?」
「た、たしかに……」
門下生たちもザワザワしだした。
そして、とにかく姫がここに現れたことに、チオの両親は慌てて駆け寄って膝を着いて頭を下げた。
「こ、これはこれはトワレ姫」
「まさか我が道場にお越しいただけるとは思わず、このような慌ただしい場面を―――」
そんな二人に対し、そもそもトワレもノーアポで来ていたわけだし、ニッコリと微笑んだ。
「いいえ~、こっちこそ急に来ちゃってごめんなさい。レネトラ師範もお久しぶりです~。あなたのおかげで騎士団たちの体術もとても向上してるって大評判!」
「は、ありがたきべらぼーに幸せ!」
そうか、そもそも二人は顔見知りか。
そりゃ、帝国最強の格闘道場だし、騎士団での指導とかあったわけか……
「と、ところで、姫様、先ほどあちらの男を……その……」
「うん、ハビリは私の婚約者だよ? ハビリ・スポイルド。貴方も知っているエンゴウ総司令の息子だよ?」
「うぇ!? え、エンゴウ総司令の!?」
その瞬間、またもや道場内が大きくざわめきだした。
「お、おい、エンゴウ総司令の……マジかよ!」
「ということは、レツカくんの弟……」
「おいおい、大貴族じゃないか!」
そういえば、俺は自分の名前は言ってたけど、家については言ってなかったな。
「はぁ、それは驚きやなぁ~、チオは知っとったん?」
「う、うん、知ってたけど……」
「それなのに決闘したん?」
「だ、だって……う、ううん、それより……それより!」
と、そこで色々と戸惑っていたチオがハッとして前へ出てきた。
「ど、どういうことよ、先輩! そ、その、姫様の婚約者とか……そ、それに、後ろの三人も! に、にく、べべ、べんき、とか……ブタとか……ら、らんこーとか……」
「あ、いや、それはこいつらが―――」
「先輩って、な、なに? ネメスにもイチャつかれてたし……そ、そういう人なの!?」
いかん、せっかく和解できそうな空気だったのに、急にまた雲行きが怪しくなってきた。
ここは……
((((あっ……なるほど……))))
だが、そこで俺が何か言い訳する前に、ソード、マギナ、トワレ、そしてイチクノが前に出た。
「うむ、小生は坊ちゃまにドスケベ専用肉便器として奴隷商から購入された、坊ちゃまの所有物! この乳尻太もも三穴から髪の毛一本に至るまで、全て坊ちゃまの玩具である!(チオめ……雌顔になっている……さては坊ちゃまに惚れたか? 許さん! これ以上メス穴は増やさせん!)」
「私は御主人様の家畜のメスブタです。御主人様にブヒブヒ調教されて、ブヒブヒ御奉仕することだけが生涯の務めです(チオが御主人様に? あなたはネメスとどうぞイチャついていればいいのです。最近では女性同士の婚姻も認められる多様性社会、御主人様の肉汁は私が味わうのです。これ以上、メスブタ候補はいりません)」
「ふふ、初めましてだね。トワレだよ? そして、ハビリは私のお婿さんになるからね? これはもう父である皇帝も、そしてエンゴウ総司令も認めた正式な決定だからね(正直私はお妾さんとか嫌なんだよね……お婿さんには私だけを愛してイチャイチャ可愛がって欲しいし……ソードとマギナと、イチクノは仕方ないにしても、ネメスもこの子もダメ~♥)」
「姫様の忠臣にして御館様の妾人形の一匹でござる(別に拙者はどうでもいいが、姫様は妾は少ない方がいい様子。ならば、邪魔は事前に排除)」
と、俺の評価を下げる気しかないと思われるようなことをチオに言いやがった。
このままじゃ、チオも、それに少しは認めてくれたような雰囲気だったチオの両親も……
「な、なんという、べ、べらぼーな……(まさかエンゴウ総司令の息子で姫様の婚約者……アレ? なら、チオちゃんが妾に入って子を生んで認知してもらえば……王家の縁者に?)」
「はぁ~、若いのにどえらい坊やったんやなぁ~(性欲ヤバそうな匂いはウチの勘違いやない。最初は驚いたが、コレはチオも仲間に入れてもらった方が得やなぁ……血筋も優れとるし)」
両親も……ん? なんか、目がキュピーンと光ってるような気が……
「し、信じれない……何よぉ……何よ!」
「チ、チオ?」
しかし今一番気にしなくてはならないのはチオ。
チオはさっきまでと一変して、俺を女の敵のクズ野郎を見るような目で……いや、当たっているんだけど……
「さんざん耳障りのいいようなことを言って、結局……あんたはペラペラとテキトーなこと言って……結局……結局女の子とエッチなことしたいだけなんでしょ!」
「いや、お前は何を「「「「その通り!」」」」って、お前らダマレぇえ!」
「サイテー……ほんっと最悪……いい奴だと思いかけてたのに……ほんっと最低のクズ野郎」
いかん、前回以上にオコなんだけど!?
しかもこれはもはや侮蔑、軽蔑、拒絶というかもう修復不可能なぐらいの様子?!
「チ、チオちゃん、べらぼーなことを言うもんじゃないというか、そのだな……」
「相手は姫様の婚約者やで?」
「そんなの関係ないわよ! こいつは最低のクズよ! 女の敵!」
女の敵認定されてしまった。いや、当たってるんだけど……
「ん~、でもぉ、確かにハビリって女の敵かもね♪ んふふ」
「って、トワレぇ! あんた自分の婚約者が、国民にここまで言われてるけどいいのかよ!? 元々あんたが……」
「ふーんだ、私だってハビリにはムカッと来てるんだから、少しぐらいいいんじゃない?」
そして、あえて俺を貶めるようなことを口にしたトワレは「いい気味」と笑っている。
「だってさ~、ハビリってば私が婚約者になったのに、チュウどころか手も握ってくれないじゃん? 私は少しぐらいエッチなことしていいよって言ってるのに、ちっとも手を出さないんだもん。ムカつくでしょ? ね~、イチクノ」
「確かに、拙者もいつ性処理用具のお役目が与えられても良いように常日頃から体も隅々まで洗っているのだが、未だに声がかからぬのは肩透かしでござる。まぁ、その不満はソードとマギナの方が大きいと思うでござるが……」
「確かに。小生はさっさと全穴開発して欲しいというのに御主人様は、いれるどころか、しゃぶらせてすらさせてもらえないのは、何とも不服!」
「私もです。一体いつまでお預けを食らえばと不満です。このままでは私が御主人様を押し倒して―――――」
くそぉ、こいつらぁ……俺が手を出さないからって、逆にそれが不満と……ん? あれ?
「え、ちょ、ちょっと待って? え? それってつまり……先輩は……姫様含めてまだそういうことをしてないってこと?」
「「「「え? …………あっ!?」」」」
「じゃ、じゃあさっきのは……嘘ってこと?」
「「「「し、しまっっっ!!??」」」」
「許嫁である姫様とキスどころか、手すら……こんな色気のある従者にも手を出してない……な、なんだ……何よぉ、驚かせて……そうなんだ……」
それは、四人の完全なる墓穴だった。
そう、俺は実際に四人には一切手を出してないのだ。
つまり四人が何を言おうと、そういう既成事実がない以上は全てがデマ。
「ほっ……そっか……」
ほっ……よかった、コレで俺たちは和解……
「ハッ! ち、ちが、い、今のは別に私はこんなエロエロ先輩なんかなんとも思ってなくて、た、ただ、女の敵ってのは言い過ぎただけであって、それで仲良くなるとかそういうのも、が、学校行くとかも関係ないんだから、勘違いしないでよね!」
こ、こいつ……
((((メンドクサイ……))))
なんかメンドクセー女だなぁ……
「と、とにかく今日はもう帰って!」
「い、いや、チオ……明日から学校に――――」
「うるさい、イイから帰んなさいよ、バカ先輩!」
そして、結局なんか色々怒ったり喜んだり安堵したり怒ったりで訳が分からんまま、俺たちは道場から追い出されてしまった。
「こ、こら、チオちゃん! 姫様の婚約者に――――」
そして、俺はまだ粘ろうとしたら姫たちに引きずられてそのまま外へ……
「あ、お構いなく~、私たちもう帰るから。じゃ、帰ろ、ハビリ、早く帰ろう。もう色々と危ないもん(もうお妾さん不要!)」
「お館様、小柄の貧乳娘が好みでしたら拙者が変化の術でいかようにでも?」
「では、もうこれ以上いても仕方ないので秒で帰りましょうぞ(さらばチオ。もう小生は油断しない。貴様と坊ちゃまの和解和姦のハメハメは断固阻止だ)」
「ご主人様。夕食が遅くなりますよ(もうこれ以上は看過できませんし、ご主人様にはお仕置きです。さっさと『幼児化の薬』でも飲ませて繋いでしまいましょうかね)?」
ヤバい……
解決しなかった……
どうしよう……
このままでは、奇跡の黄金世代が……
いや……
奇跡の黄金世代はもう一人いる!
あいつも前回は俺に対する印象は最悪だったかもしれないが、それでも今のネメス、トワレ、チオ、ソード、マギナを見る限り、「一番まとも」かもしれん!
あの、「聖母」と呼ばれたシスターなら!
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