第17話 尻軽ロイヤルビッチ
「ん~、ごちそうさま」
「ご、ごちそうさま」
「ねえ、ハビリ。マギナの料理なかなか美味しかったよ。これなら今後も任せられそう」
「な、なら良かった、です」
「嫌味じゃなくてさ、元お姫様で家事も料理も全部こなせるなんてすごいね」
「え、ええ……そう思います」
俺の家で姫様と向かい合うようにディナー。
別室でソードとマギナとネメスとイチクノが飯を食ってるだろうが、いつでも何があってもこっちに来れるように息を潜めている気配が丸分かりだ。
「ところでさ~、二人きりの時はハビリも敬語はやめていいよ? 私たち夫婦になるんだし、呼び捨てでいいよ」
「あ、い、いえ、ま、まだ婚約ですし、そそ、そういうわけにも」
「ん~、じゃあ命令♪」
「…………」
それにしても、このお姫様に振り回される。
いきなり夫婦と言われても何の心の準備もできてないし、それにこの人は結構ニコニコと人懐っこいけど、これまであまり親しくなかっただけに接し方が分からない。
前回はむしろ嫌われてたし、避けられてたし。
「じゃ、練習~。私のことは姫様じゃなくて名前で! 三、二、一、ハイ!」
「ぐ、と……トワレさん……」
「ん?」
「ッ!? トワレッ!」
「……んふ~♪ よくできましたー!」
一瞬、ものすごい笑顔で寒気のするようなプレッシャーを放ってきた。そう、この人は常に笑顔。だから怒るときも笑顔。だから苦手なんだよ。
そして、相手に心底失望したときは真顔。前回その真顔を俺は向けられたな……
「ん~……」
「な、何ですか? 人の顔をジッと見―――」
「ハ?」
「ッ!? な、何だよ……ジッと見て……」
「ふふーん♪ で、ジッと見て? うん、私の夫の顔をよく見てたの。今までマジマジと見る機会が無かったから……で、ハビリって悪者みたいな顔してるかと思ったけど、よく見るとカッコいいし、慌てるところは可愛いね」
「はァ!?」
「とう!」
「ふぁ!?」
急に人の顔をジッと見て、照れるようなことを言ってきたかと思えば、次の瞬間に姫様……トワレはなんとテーブルの下をくぐって俺の股の間から顔を出して、そのまま俺の膝の上に向かい合うようにして座って来やがった。
「ちょ、あ、あの、何を!?」
「んふ~、もっとよく見よーと思って……あと、どーせ夫婦になるんだし、男の人とイチャイチャっていうのもしてみたくてー♥ 姫は思春期で興味津々なのであ~る♥」
帝国の姫なのにハシタナイ……のに、間近で見ると本当にこの人もまたソードやマギナに負けない美しさと可愛らしさをもって、その上で神々しいオーラがあって……身体も別に胸がデカいわけでも尻がデカいわけでもないが、柔らかさはあって、それを無防備に俺にこすり付けて……こ、コレ、反応するなってほうが無理……
「こんなに近くに来ちゃったぁ~」
「そ、そうか……で、でも、近すぎて……」
「……ハビリって女の子とのエッチは詳しいの? あの奴隷の二人とエッチしてるの?」
「ぶっ!? い、いや、シテナイ……けど……」
直接的すぎるぞこの姫……もっと恥じらいとかないのか? 女の尊厳を無視してオモチャのようにやりたい放題した俺が言う資格もねえけども……
「ありゃ……じゃ~初めて同士ィ? リードして欲しかったけどぉ、お互い探り探りになっちゃうのかなぁ?」
「い、いや、まだ焦んなくても?」
「でも、今日するよ? えへへ、私が持ってる下着で一番エッチっぽいのを穿いてきた~♥」
「わぶっ!?」
唐突に膝の上でスカートの裾をペロンと捲って黒のレースって……あんた意外と大人っぽいものを……え? マジでヤルの!?
俺は今回の人生では真面目に生き、ソードとマギナや女を傷つけず、そして後は行き倒れた俺に施しをしてくれた人たちに恩と、守れなかったものを守るために……
「あは、ゴメン。やっぱちょっと恥ずかしくてムズムズしちゃった~。これ以上見たければハビリが頑張ってね?」
と、これまで掴みどころなくニコニコしていたトワレがようやく顔を赤らめてハニかんだ。
あ、普通にかわい……いやいや、でもこれはどうすればいい?
新入生の入試で俺がネメスに絡むのが少し遅れただけでここまで歴史が変わっちまうなんて。
仮にこれ、俺が姫を拒否したらどうなる?
最悪な話、かなり俺はヤバいことになりそうな気がする。
とはいえ、ヤッて本当に婚約になったらそれはそれでかなりメンドクサイことに……王子が居るから俺が王位を継ぐことは……あっ、でも王子は戦死するし、姫も……いや、でもそれが原因で親父も兄貴も……それにこんな形とはいえもう情も沸いてるし、歴史通り死なせたくないし……
「……ねえ、ポカンは禁止。早く口説いてよぉ~」
「ふぁ!?」
「ハビリの言う通り、好きでもない男との結婚も、交わりも覚悟しているよ? だからせめて……精一杯私を口説いて惚れさせて欲しいなァ~は・や・く♥」
と、姫が少し顔を出すだけでキスできるぐらい顔を寄せて来て息がかかるイイ匂い軽い柔らかいお尻の感触が腿にオッパイ形も良さそう……じゃなくてぇ!
「……ふぁん!? あ……あ~~~、ハビリ~」
「うぅ! あ、こ、これは、その……」
「な~んだ、ハビリは乗り気じゃないかと思ったら~、そういう気分になってるじゃ~ん♪ 急に変な感触があってビックリしちゃった♥」
「こ、これは、その!?」
「あは~、だ、だいじょうぶウ! イチクノにこういう知識は教えてもらってるから、照れないのお! 私は照れちゃうけどぉ」
そりゃ俺も絶食になって性欲を断つ……なんて言っても体はやはり反応してしまうわけで……イカン……それこそ前回は毎日複数回朝も昼も夜も関係なくソードとマギナを抱いて弄んで蹂躙していたぐらい俺も常に性欲を発散させているぐらいだったから、今回まだ俺の身体はそういったものは未経験状態なわけで――――
「さーて、夕食も終えられましたな、坊ちゃま。お疲れでしょう、小生がマッサージして差し上げましょう! (ネメス殿じゃなくてもこういう態度を取るのか、トワレ姫は……なんという尻軽さ!)」
「はい、姫様も今日はお休みになられてください。御主人様、後片付けを終えましたら私も全身マッサージをしますし、何でしたら御主人様が私で大人の玩具にして弄んでもかまいませんよ? (何という馴れ馴れしい……ロイヤルビッチですね、トワレは)」
とそのとき、いきなり部屋の扉がかなり乱暴に開けられた。
そこには、笑顔ながら額に青筋立てて明らかに起こっているソードとマギナ。
「お、お前ら?」
「も~~~~な~~に~? 旦那様と妻のイチャイチャで親睦深めるって時に~。イチクノは?」
まさかの乱入に驚く俺と、明らかに不満そうに頬をプクッと膨らませるトワレ。
だが、トワレは俺の膝の上から降りる様子も、取り繕う様子もない。
ただ……
「ぐぅ、ひ、姫様、も、申し訳ありませぬ……」
「あ、あれぇ?」
隠密の側近イチクノは、どうやら全身を縄で縛られて取り押さえられている様子。
これは……え? あの縛り方は……俺がかつて二人を懲らしめる時に……え? こいつらそういうの俺がやる前から知ってるの?
「すみませぬ。何やら小生の道を阻もうとしていたので」
「まったく……私と御主人様の間を阻もうとするなど……不届きものですねぇ」
ニタリと笑みを浮かべるソードとマギナから漏れる威圧感。空気がビリビリ。
な、なんだ、こいつら、何をする気だ?
「あ、あわ、あわわ……どど、どうなってるのぉ?」
そしてドアの陰から顔を青くしてプルプル震えているネメス……いや、お前何をビビってんだよ、未来の勇者?!
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