第16話 望まぬハーレム
(ちぃおおお、待て待て待て! それでは小生はどうなる?! っていうか、この姫はいずれ死ぬわけで……いやいや、それ以前に坊ちゃまには小生がいるわけで!)
(ばかな、トワレは前回はネメスに惚れ……いえ、そこからネメスが女性と分かってダメになったわけですが、それなのになぜここで御主人様に!? しかも、トワレも満更でもない様子で……なぜ私と御主人様のメスブタライフの邪魔を!?)
やばい……
(この脳筋王子も何を言っている? トワレ姫の婿に坊ちゃまを? この姫、前回はネメスに惚れていたくせに……色々と思うところがあったから今回は助けようと思ったが……やはり死んでよいか?)
(私の御主人様に何を! 御主人様は生涯結婚せずに私がいるといいますのに! この脳筋王子も、やはり死んでも良しですね。トワレもネメスに惚れないのであれば死んでよしにしましょうかね。あっ、でもそれで御父上殿と兄上殿は、心を壊された皇帝に無理な死地に送られて……ぐぅ、どうすれば!)
急展開過ぎる。
俺がトワレ姫の婿?
「い、いや、王子! お待ちを……お、俺は……ほら、このように二人の女を奴隷にして侍らせる男ですよ!?」
とにかく、この展開は勘弁して欲しい。
何とか断る方向に持っていかないとと思い、俺は今回手を出していない処女のままのソードとマギナをあえて王子と姫様に見せつけた。
だが……
「安心しろ。お前の所有している奴隷も、妾として扱えばよい」
「あれぇ!?」
「聞いてるよ、ハビリ。むしろ、その二人とのことで、色々と自分のことを見直して反省して心を入れ替えたみたいだって総司令もレツカも言ってたし、貴族や王族が愛人を持つなんて当たり前でしょ? レツカは奥さん一筋だけどぉ~」
「姫様ッ!?」
しかし、王子も姫様も気にしない!?
(ううむ、とりあえず小生の妾ポジションは確保……)
(破談にできないのであれば、これは妥協点ですね……)
ん? なんか、ソードとマギナが一瞬だけ小さく拳をグッと握ったような……怒った? いや、喜んだように見えなくも……
「で、でも、俺はどうすれば……親父もぉ! 親父も俺に今まで好きなように生きて勝手にしろとか言ってただろ? ここに来てなんだよコレは!」
いずれにせよ、どうにかならんかと、俺は親父に助け船を求めた。
だが、親父は真剣な顔で……
「ハビリよ。確かに私はお前に自由に好きなようにしろと思っていたが、心を入れ替えたお前には私も接し方を変え、さらに求めるものも変えようと思う」
「……うぇ?」
「お前は紛れもなく、スポイルド家に、そしてこの国にとって恥ずかしくない傑物であると証明された。ならばこそ、私もお前に対しては、ただの放任していた父としてではなく、スポイルド家の長として、この国の軍総司令として、陛下に仕える忠臣として、この国を将来背負って立てる逸材を積極的に登用する!」
今まで俺の事なんて見放していたから、その分もう好きにしろ状態だったのに、俺が真面目になったばかりに親父もまた俺に対して厳しく求めるように……ナニコレ?
「し、しかし、姫様も、いくら何でもいきなり俺とかって、どど、どうなんですかァ?!」
ならば張本人は? 俺は姫様に問うと、逆に姫様はプクッと頬を膨らませて……
「あ~、ハビリは嫌なの~? 私のお婿さんになるの~」
「え、あ、そんな、滅相もないです……」
嫌です。マジで。
「っていうか、私も姫で、ハビリも貴族……そもそも私たちに自由な恋愛とか結婚とか許されないのなんて当たり前でしょ?」
正論……
「たしかに、私も昔は嫌だったよ? でも、昨日とか、今日のハビリを見て、今のハビリだったら私はイイなって思ったの」
「うぇ、あ……そ……それは光栄で、す……」
ダメだ、姫様は受け入れる気満々だ。
「とはいえ、ハビリよ。お前もすぐに結婚と言われても戸惑うであろうし、まだお前も魔法学園を卒業もしていない中で式をするわけにもいかんであろう。ゆえに、今はまだ婚約とし……」
お、そこで王子から猶予っぽい言葉。婚約……ならば破棄も可能?
「今日よりこの屋敷にトワレも住み、共に生活して親睦を深めるがよい!」
「そういうことだ、ハビリよ。なので、屋敷の執事や女給たちを連れて、今日より私は王宮、もしくはレツカの家で過ごすことにする。孫とも過ごしたいしな」
「だからハビリ、兄さんとの約束だ。姫様を悲しませたりしないように、どうか親睦を深めるんだよ?」
いや、違う。絶対に逃がさねーぞ的な圧力だ。
っていうか、姫が今日からここに住む?
「親睦深まってトワレが懐妊することは大歓迎だ! トワレ、良き子を産め!」
「は~い」
しかも「ヤルことちゃんとヤレ」と堂々と!?
いや、俺はこの二度目の人生、そういうことはもうしない、俺にはそんな資格が無いと誓ったのに、何でソードもマギナもネメスもそして……
「あのね、ハビリ……私、あんまり『そーいうこと』知らないけど、頑張るから……イロイロ……優しく教えて可愛がってね♥ なーんちゃって、照れ照れ♥」
「あ、あぅあ……」
姫様まで……なんかもう、どうなっちまったんだ……
「あっ、そうそう……『イチクノ』、あなたも挨拶しなさい」
「ドロンッ! はっ、姫様。お初お目にかかります、婿殿。拙者は姫様の側近のイチクノにございまする、ニンニン」
「……ん……」
と、そこで姫様が手を叩くと、姫様の傍らに片膝付いた黒装束の面を被った女……姫の側付きである隠密女……
「今日から私とイチクノがお世話になるから、よろしくね、ハビリ、あとそちらの二人と……あと、そこの子……昨日の子だよね?」
「うぇ? あ、は、はい! あの、ネメスです! 昨日はありがとうござました! その、僕は再試験の日までここに厄介になって、先輩たちに特訓してもらおうと……」
「うんうん! ふ~ん、そうなんだ……でも……あれ? ねぇ、君、ひょっとして……女の子?」
「うぇえええ!? あ、あの、えっと、あ、あう、あ、そ、それは……」
「やっぱり~、スゴイ可愛い子だなって思ってたのぉ!」
ダメだ、話がポンポンと進んでいく。
しかも姫様はネメスを見て、しかも女と一瞬で見抜いて……いや、もう雌顔丸出しのネメスならバレバレだけど……
「兄様~、ほら、この子だよ、昨日なかなか見どころがありそうって子」
「ぬ? そうか……しかし、男と聞いていたが?」
「女の子だった~」
「……なに?」
そして、王子もネメスに興味を持って……そう、それだよ! そいつがこの国の、人類の救世主となる勇者なの! 男だったらそいつが姫様の婿になる予定で……だけど、女で……
「話は聞いている。勇者を目指しており、才があると。しかし性別を偽っているのか?」
「う、そ、それは……は、はい。申し訳ありません」
流石にネメスも姫様と王子相手に問われて虚偽はできないので、観念して項垂れた。
「その、申し訳ありません。ただ、女であることを知られると、色々と――――」
「それは女であることがあらゆる不公平や、無能な連中の妬みなどに繋がり、正当な評価を貰えない……そう思ったか?」
「う、そ、それは……」
「ならば、見損なうな! この帝国、そのような男女による不平等不公平なことはせん! 実力主義である! たとえ貴族でも無能であれば登用せんし、有能であれば奴隷の身分であろうと重用する!」
「王子……」
「だからこそ、自分に何の後ろめたさもないのであれば堂々と女であることを明かし、その上で再度勇者を目指すが良い! そのような些細なことを気にするようでは、世界を背負う勇者になどなれん!」
いや、そいつは結局女であることを隠したまま勇者になったのに……でも、なんか王子の言葉に感激したようにネメスは目を輝かせ……
「ありがとうございます、王子! 僕、僕は……もう自分を偽りません! 女の子だって勇者になれるんだって、証明してみせます!」
「良い目だ。再試験、励むが良い!」
「はい!」
で、なんやかんやでネメスは……
「えへへ、先輩……僕……あっ、私……う~、何だかずっと『僕』って言うようにしてたから急には変えられないけど……先輩、昨日の内緒にしてっていう話は無しにします。僕……堂々と女の子として魔法学園の門をたたき、そして勇者になろうと思います!」
「そ、そう、か……」
こうなると……勇者のハーレムによる奇跡の黄金世代一派は……どうなっちゃうんだ? こいつが男だと勘違いしてすり寄っていた女だっていただろうし……
「だから、その、内緒にしてくれたら何でもするって約束ですけど……あっ、でも、先輩にはすごいお世話になってるし、僕先輩になら……だから、先輩……え、エッチなことは、先輩が望んでくだされば――――」
「オイこらメス猫。何を言っている? 坊ちゃまには小生がいる」
「まったくです、ドサクサにまぎれてこのドスケベ女勇者は何を言っているんでしょうかね?」
「わ、わわ、なんか……ハビリはモテモテ? しかも、なんか~エッチな話してる~……うふふ、楽しそう♪」
「………………乱交なら拙者も混ざったほうが?」
なんかもう、頭痛い……
――あとがき――
お世話になっております。
本作、毎年恒例のカクヨムコンテストにエントリーしております。
もし面白いと思っていただけましたら、フォロワー登録及び★★★で評価頂けたら、すごく嬉しくモチベーション向上に繋がります。
何卒よろしくお願いします!!!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます