ループした悪役かませ炎使いが真面目に生きたら女勇者パーティー全員が痴女になってしまい世界はピンチ!?

アニッキーブラッザー

第一部 今度こそ真面目に

第1話 ループ前の俺(1)

――神様、お願いだ。俺みたいな最低のクズは死んで構わない。だから、せめてこいつらだけは助けてやってくれ



 死の間際になって俺は自分がどうしようもなクズであり、生きる価値もない死んで当然の奴だと理解した。


『いいかよく聞け! 俺はこの帝国における筆頭貴族であり、代々優秀な騎士を輩出している最強炎使いの一族、スポイルド家の次男! ハビリだ! 見よ、この真っ赤に燃える炎がその証!』


 あらゆるものに恵まれた環境で生まれ育ったはずなのに、俺自身の性根があまりにも腐っていた。


『軍総司令の親父と、騎士団英雄の兄貴のことはお前らも知ってるだろ? 俺と仲良くなりたければ、せいぜいご機嫌取るんだな! おっ、何か文句でもあるのか? 俺の親父の力を使えば、お前らを退学させるぐらい楽勝なんだぜ? それとも燃やされてぇか?』


 親父や兄貴の威光を使って、魔法学園に入学してからもやりたい放題だった。

 エラそうな態度で他生徒たちを見下して、誰も逆らえないようにしたり、そして何よりも女関係は特に……



『ゴミのチンピラ共が。俺を誘拐しようとは死刑でも生温いぜ? そしてよくやったぜ、『ソード』。流石は俺の奴隷剣士』


『はっ。坊ちゃまにお怪我がなく何よりです。はうん! んくっ、ぼ、坊ちゃま……』


『まったく、こんなに美人で胸も尻も魅力的で、何よりも強い女、それが俺様に尻を撫でられるだけで震えやがる』


『ぼ、坊ちゃま……あん、人に、み、見られております……』 


『来な、ゴミ共にイラついたから死ぬほどベッドで発散させてもらう』


『はい……』



 かつては大陸最強の戦闘部族だったが、部族同士の争いで滅亡した最後の生き残りを奴隷商人から俺が買い取って、日常生活での護衛と肉体的な奉仕もさせている奴隷女。

 


『ご主人様……おかえりなさいませ……ご飯にします? お風呂にします? それとも―――』


『メスブタにする♪』


『………ッ……か……畏まりました……うぅ、ぶ……ぶひ、ぶひぶひ、ぶひん』


『カハハハハハ、みっともねーなぁ、マギナ! 白銀の魔姫と呼ばれて膨大な魔力を持つお前も、国が亡べば首輪をつけられたただの奴隷メイドなんだからよぉ。今日も朝まで死ぬほど可愛がってやるよ』


『……うゥ……』

 


 興味本位で参加した人身売買のオークションの目玉として売り出されていた、戦で滅んだ小国の姫で、感情の起伏は少ないがそのクールで冷たい目にそそられて大枚叩いて購入したマギナ。

 俺はソードとマギナを人として扱っていなかった。

 愛玩道具……いや、愛すらなかっただろう。性処理道具として扱っていた。

 誇りも尊厳も踏みにじった。



『ソード……マギナ……二人は一生俺のモノだ……お前らを俺は一生手放さねえ。だから一生傍にいろ』


『『御心のままに』』



 そして俺はそんな自分の心を痛めることもなかった。

 俺は何をやっても許される存在だと思っていた。

 この世は俺のパラダイスだと思っていた。

 ただ、そんな俺の人生は唐突に狂った。


『おい、そこのお前。平民か? どうしてこの魔法学園の門を叩こうとしている? あ? 勇者になる? どう見ても魔力量もカスの田舎ものみたいなお前がか?』


 それは俺が魔法学園に入学してから翌年のこと。

 新入生の入学試験を見物に行ったときのできごとだった。

 良さそうな女の品定め的な……

 そこで俺は……


『ここは平民のクズが入るような場所じゃないんだよ! お前みたいな底辺がいると俺の格まで下がっちまうんだよ!』


 一気に堕ちる。


『お願いします、通してください! 僕はどうしてもこの学園で強くなり、勇者になりたいんです!』


 それは、背丈の小さいナヨッとした何でも無さそうな奴だった。

 大した魔力も感じない、身なりも貧相な明らかな田舎者。

 ただ、その童顔に周囲の女生徒たちが「かわいいよね、彼」とか微笑んでるのが気に入らないので、そいつが試験を受ける前に難癖付けて俺は道を阻んだ。

 そして嘲笑した。



『ははは、俺に楯突くとはどれだけ田舎ものだ? 俺はあのスポイルド家の子息だぞ? ここはな、選ばれた超一流のみが存在を許される場! お前みたいな世間知らずの田舎者には試験を受ける資格もないんだよ!』


『ッ、そんなの……そんなのおかしと思います! 平民だとか貴族だとか、そんなの関係ありません! 何よりも僕は僕自身の誓いのため、夢のため、ここで屈するわけにはいかないんです!』



 そして、奴は俺に屈しなかった。



『僕はあなたのような人は嫌いです!』


『あ? テメエ、誰に向かって言ってやがる! 俺を誰だか知ってるのか?』


『ええ、分かります。あなたはろくでもない男です! 僕は権力に物を言わせて他者を虐げる人を嫌悪します!』



 誰も俺のやることに文句のない魔法学園にて、初めて俺に対して文句を言ってきた。



『なら、決闘だ! お前に選ばれた貴族の力を見せてやる!』


『望むところです』









――あとがき――

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