#074 ヒーラーエンジェル アリスちゃん爆誕!
そうこうしているうちに留美さんが帰ってきて、一緒に夕飯を食べる。
「映子さんの料理上手くなったなあ⋯⋯」
「ありがと! 頑張ったよ私!」
「これなら私が料理をするまでもないね」
「ええ私頑張って真樹奈の分まで料理するね!」
映子さん⋯⋯それは姉にいいように使われているだけだと思うぞ。
まあ本人が幸せそうだからいいけど。
ここでちょっとしたサプライズを仕掛けることにした。
さっきアリスの新しい服のデータが届いたことを留美さんには言わないように、僕は姉と映子さんに頼んだ。
だって知ってると不自然だし。
まさかファンのみんなは僕らが同居しているなんて思いもしないだろうから。
なので素のリアクションを得るために僕は留美さんに秘密にしたままだった。
しかし花束の方は見つかってしまったのでその説明はしたのだった。
「ブルーベルさんって確か週1回しか配信しない人だっけ?」
そうなのだ、ブルーベルさんは極端に配信回数の少ないVチューバーでもある。
「日曜しか配信しない人だね」
日曜の朝には通称『スーパーヒーロー・チャンネル』と呼ばれる時間帯がある。
それが終わった直後にその回の感想をひたすらしゃべるVチューバー、それが『マスクド・ブルーベル』なのだった。
ガチのヒーローオタクなのは間違いない。
さて、和やかな団らんが終わってお仕事である。
僕と留美さんは同時に配信の準備を始めた。
なお最近は姉と映子さんの配信は時間をズラすようになっている。
身内で視聴者の取り合いになるだけだし。
配信の準備を終えた僕は昨日のデータを見ながら考える。
「僕ら4人分の再生回数と同時接続者数がこんなに⋯⋯」
一部重複して見ている人も多いだろうけど、Vチューバー関連のだいたい4割くらいは見てくれている計算⋯⋯なのだろうか?
「いい宣伝になってるといいけど」
僕はわりとニコチューブで見た影響で、そのゲームをやってみたいと思うタイプだ。
伝説のVチューバー美異夢さんの真似して僕もドラファン2のRTAとかしたし。
そういや僕の歌声が全世界流出した日の事だったな⋯⋯。
そう考えると僕の今の現状は美異夢さんのおかげ⋯⋯と言っていいのだろう。
こんなふうに大きな影響を他人に与える美異夢さんはホントに凄いVチューバーだ。
いつか会える日が来るだろうか?
このVチューバーという仕事は僕に多くの夢を与えてくれた。
いつか会えたら、そのお礼を言いたいものだ。
そして僕もいつかは⋯⋯誰かの夢を叶えるVチューバーになれるのだろうか?
いずれ誰かにそう思って欲しいから頑張ろう。
「⋯⋯それにしてもコレみんな驚くだろうな」
コレとはアリスの新衣装である。
なにせ僕ですら知らなかったのだから完全に不意打ちできる。
さあ冒険の再開だ!
── ※ ── ※ ──
「みなさんこんばんはー。 電遊アリスちゃんねる改め『アリスの冒険世界』のお時間ですよー」
まるで「お注射のお時間ですよー」みたいな口調で言う。
それもそのはず──。
【アリスが看護婦になっている!?】
【白衣の天使キタコレ!】
【なんか物騒な銃担いでて草】
「ふっふっふっ! みなさん大喜び、ありがとうございます。 もちろんボクも大喜びですよ」
【新衣装ヒーラーだからかw】
【事前告知なくてびびったw】
「ええ、そうでしょう。 ボクもまったく知らなかったんですよこの衣装。 ⋯⋯というのも、昨日の配信を『オシロンママ』が見ていたらしく、その後の深夜のテンションマックスで描いてくれたみたいです!」
【オシロンが一晩でやってくれたw】
【仕事はやいwww】
【いつも締め切り破るくせにwww】
「オシロンママ、見てくれてるでしょうか? 似合ってますか、ボクの白衣の天使は?」
【オシロン:似合ってるよアリスたん!】
と⋯⋯コメントが流れていた。
「⋯⋯どうやらママ、居るみたいですね」
【授業参観かなw】
「あのオシロンママ、無理しないで休んでくださいね」
【オシロン:このあと寝落ちします】
「ありがとうオシロンママ! 最高の誕生日プレゼントになりました!」
【え?】
【ほわい?】
【なんだと!】
⋯⋯あっ!? やべ口が滑った。
「⋯⋯実はボクの製造年月日は、古代バベロニア歴の7月15日なんです」
まあリアルの誕生日バラすくらいなら問題ないだろう⋯⋯たぶん。
【ファミステの発売日じゃないかw】
【いやZG-1かもしれん】
「いやー、偉大なゲーム機と同じ誕生日ですみません」
【うーんやはりアリスはゲームの申し子w】
【8ビットの天使】
「ですよねー」
⋯⋯まあこれでいいだろう。
炎上する事じゃないだろ誕生日くらいで。
【てことは明後日が誕生日なのかアリスの】
「そうですね、今日が13日だからそうなりますね」
【オシロン:徹夜で完成させるんじゃなかったw】
【ママしっかり】
【ママ面白いなやっぱりw】
「いやホント嬉しかったので感謝していますよ、オシロンママ!」
こうしてしばらくボクの誕生日で話が進むのだった。
「あとそれと、今日ブルーベルさんからお花を頂きました」
【ま・た・かwww】
【あの人誰にでも花を贈るよね】
「そうだったんですか? ボクあんまり知らないので」
【虹幻ズのメンバー全員貰ったって言ってたな】
【ちなみにどんな理由で?】
「昨日ボクがヒーローに成りたいって言ったから⋯⋯勧誘かな? ヒーローの?」
【www】
【あの人ヒーローマニアだからなw】
「しばらくボクはこの『ローアド』のベータ版しかしないのでコラボは無理そうです。 ごめんなさいです、ブルーベルさん」
【ブルべちゃんフラてたw】
【ブルべはぼっちヒーローだし】
「ああ、でも! 『ローアド』は製品版になってもボクは続ける予定なので、その時は一緒に遊べるといいですね」
【アリスやさしい】
【おい喜べブルべ! 友達出来たぞ!】
⋯⋯ブルーベルさんってどんな人なんだろう?
ボクはまったく知らないがコメントを見る限り⋯⋯いい人そうだとは思った。
リアルの『僕』と同じようにぼっちみたいだけど⋯⋯。
こうしてオシロンママやブルーベルさんの話題で盛り上がったせいで、ゲームの開始が遅れてしまった。
「あ、ヤバイ! そろそろインしないと。 ルーミア達待ってるかな?」
【向こうも楽しんでるな】
うーん、今日も同時に別のチャンネル見ている人いますね、やっぱり。
「それではこれ以上待たせるわけにはいかないので、もうログインしますね! アリス・ドットチェンジ!」
こうしてボクの2日目の冒険世界が始まるのだった!
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