23話 道①

 私は結が生まれた後帰るところがなくて外暮らしをしていた。

 産まれたのが冬だから寒かった。

 良くないということは、もちろん分かっている。

 生まれたばかりの結を定まった環境下に置いてないこと、本当に申し訳なく思っている。

 でも私には帰る場所がない。だから、こうするしかなった。

 ベビー用品は生まれる前に買っておいた。

 最低限の必需品しか買えていない。

 そもそも、何が赤ちゃんに必要なのかわかっていない。

 中古を買うことも多かった。

 新品の服なんて買ってあげたくてもあげられない。

 一つ一つの品の値段も高額だから、躊躇してしまう。

 家がないからあんまり大きいものは買えない。

 自分の手で運ぶしかない。

 結が産まれる前は片方の手は空いていたが、産まれてから抱っこしていると両手がふさがってしまうこともある。

 重いけど頑張って持った、小さな命の方が重い。

 そう思うと少しは荷物も軽く感じた。

 でもベビーグッズというのは消耗品ですぐに無くなった。

 すぐにかばんは軽くなった、あっという間だった。

 私の着替えの洗濯回数を減らしたりして過ごしていたりでいるだけ節約した。

 そんなことをしててもお金は無限ではない。

 どんなに安い一泊数千円のホテルに泊まったって何泊もしていたらそれだけ支払う金額も上がる。

 だから、本当に体がつらいときや寒い時しか泊まれない。

 カラオケにも頼った。

 こうしてホテルやカラオケを転々とした。

 本来なら、私が仕事をしてお金を生み出さなければならないけれど、赤ちゃん連れだからできることもない。

 でもどんな手をつかってもこの子を育てると思っていた。

 子供のためなら自分の身を切っても守る。

 それが親だ。

 でもそんなことしたらこの子が悲しむだろうし、そもそもそんな勇気はなかった。

 方法も知らない。

 だから住宅街に行ってピンポンをして危なさそうな人が出たら逃げる方法をとった。

 実際にお世話になる前に逃げたこともあった。

 本当にピンポンダッシュをした。

 迷惑行為で怒られてもおかしくないが、運が良かったのだろうか。

 実際は通報されているのだろうか。

 ピンポンダッシュなんてそんなことするなって、嫌だって伝えていたのか、結もあやしてもあやしても泣き続けた。

 でも、私は二人で生きるためにした。

 見た目が良くても中身は分からない……人間の心の黒い部分を目の当たりにする。

 私は見た目が良ければ中身もいいだろうという頭だったから失敗が多い。

 若い女の人の時は最初は結のことをかわいい、かわいい言ってたけど、延々に泣き続けるからイライラさせていろんなものが飛んできた。

 本当は赤ちゃんは苦手だったのかもしれない。

 本当に怖かった……だからすぐに出て次のところに行った。

 今までいろんな人にお世話になった中には、私のことを性的な目で見てくる人もいた。

 結史上一番泣いていたときにピンポンしたらイケメンの若い男の人だった。

 私もイケメンの男の人で入っちゃったけどそれが大失敗だった。

 結はそのことを予知していたのかもしれない。

 気が付かなくてごめんね……。

 私のことを犬を触るかのようにべたべた触ってくるし、結がギャン泣きなのにその子のことは大丈夫とか言ってきて、私に纏わりついてきた。結が泣いているから授乳しようとしたら、本当に気持ち悪い目だった。すぐに飛び出した、今思えば触られていたのが、あの目で見られていたのが私で良かった。

 結が気持ち悪いあの手で触られなくて、あの目で見られなくて良かった。

 嫌だと思っても、言えない。

 嫌だと思っても、逃げるしかない。

 我慢しないと、生きていけない。

 また新しい、休ませてくれる家を探しに出た。 



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