4.ぶっ壊れスキル
水道を捻ると普通に綺麗な水が出てきた。
臭いも普通の水道水で、特に美味くもないし不味くもない。
トイレも流れるし、コンロを捻れば火が着いた。
どうやらスキルの効果ですべてのインフラが維持されているらしい。
最高の環境だ。
あんな終末世界みたいな街中でモンスターに怯えながら隠れ住まなければならない状況なんか俺にはとても耐えられないだろうから、このスキルがあって本当によかった。
しかしこのスキルでは飲まず食わずのまま生きていられた謎が説明できない。
中の住人を健康に保つような効果は無さそうなので、それはまた別のスキルなのかもしれない。
俺は次のスキルを詳細表示させた。
ウロボロス:【パッシブ効果】魔力が続く限り自身の肉体を最適な状態に保つ。あらゆる病、外傷、状態異常は回復、再生する。
このスキルは完全にパッシブ効果のみのスキルのような。
回復系のスキルだろうか。
半年も飲まず食わずで眠っていた俺が健康な体でいられたのはこのスキルの力に間違いなさそうだ。
ついでにさっき食ったパンの賞味期限が4カ月以上切れていたのに腹が痛くならないのもこいつのおかげかもな。
俺は服を脱ぎ、全身を洗面台の鏡に映し出す。
そこにはヒョロガリ中年が映し出されていた。
筋肉はつけてくれないのか。
こういうのってムキムキになっててすげーってなるものだろ。
ス〇イダーマンみたいにな。
スパ〇ダーマンで思い出したが、よく考えたら起きてから眼鏡をかけていない。
俺は酷い近視で眼鏡をかけないと遠くが良く見えないのだが、今は眼鏡が無くても遠くまではっきり見えている。
これもスキルの力か、すげーな。
ムキムキにはならなかったが、そっちは自力で頑張るとしよう。
インフラに不安が無い今問題になるとしたら食料と健康だが、これで健康の問題も無くなった。
スキルを全面的に信じるならば俺は医者いらずになったということだ。
廃墟になった街に医者なんか残ってるわけないから助かった。
それどころか魔力が続く限りは不死身みたいなものなんじゃねえのか。
やべえなこのスキル。
やはり眠っていた期間とスキルの当たりハズレというのは関係がありそうだ。
どう考えても俺は良いスキルを手に入れ過ぎている。
【剣術】はありふれたものだが、【引きこもり】や【ウロボロス】は、1つでも持っていたら大当たりと言われるようなスキルだぞ。
特に【ウロボロス】については、神話スキルというものに分類される超レアスキルだと俺は思っている。
神話の神や怪物の名前を冠したスキルはどれも強力で、チート性能を約束されたようなスキルなことはネットの世界でも有名な話だ。
ウロボロスは神話とはちょっと違うが、自分の尾を噛むヘビの意匠は太古の昔から様々な場所で使われている。
永遠とか不滅を意味しているらしく、ウィ〇ペディアの情報が正しければ紀元前からあるらしい。
とにかくものすごい古くから使われている永遠を表わす蛇のマークがこのウロボロスだ。
それはもはや神話みたいなものだろう。
それに加えて更に2つの神話スキルを俺は持っている。
【ショゴス】はクトゥルフ神話に出てくる真っ黒な粘液状の怪物の名前だし、【バロール】はケルト神話だかアイルランド神話だかに出てくる敵役みたいな神の名前だ。
クトゥルフ神話については小説をもとにした話なので神話なのか怪しいが、まあ神話と付いているからには神話だろう。
だからこの2つは完璧に神話スキルだと考えて間違いない。
半年間も眠っていたハンデに対する代償だとでも考えなければ自分の豪運に怖くなってしまいそうだ。
しかし残り2つのスキルの能力も楽しみではある。
俺は次のスキルである【ショゴス】の詳細を表示させた。
ショゴス:【パッシブ効果】状態異常無効化。水中で呼吸ができる。水中での行動にプラス補正。【アクティブ効果】魔力を消費して粘体と粘魚を生み出し、操ることができる。粘体と粘魚の中には異空間が広がっており、なんでも飲み込む。異空間の中はスキル所持者のテリトリーとなり、魔力を消費することによって内部の時間を操作することができる。魔力を消費することで粘魚は人間に存在する器官を生成することができ、スキル所持者はその感覚を共有することができる。
長いな。
今までのスキルとは格が違うということなのか、スキルの詳細は長文だ。
パッシブだけでも3つも効果があるぞこのスキル。
ぶっ壊れ性能だな。
水中で呼吸ができるとか、粘魚とか、ショゴスの神話にちょい寄せてんのか。
ショゴスはクトゥルフ神話では水中で活動するように作られたという設定だからな。
ウロボロスも永遠とか不滅の象徴だから回復再生能力だし、名前とスキルの能力は関係ありそうだ。
ショゴスでできることはかなり細かいな。
俺はとりあえず水中で呼吸ができるというパッシブ効果を確かめるために洗面台に水を張った。
水に顔を沈め、おそるおそる口を開けて息を吸ってみる。
肺の中に水が入って来る感覚は無かった。
それどころか口の中にも水は入ってこず、酸素だけを吸い出しているような感覚があった。
ちゃんと息ができるし、目もぼやけず洗面台の底をクリアに見ることができた。
これが水中での行動へのプラス補正か。
これなら水の中で生きていけそうだ。
海にモンスターがいなければ素潜り漁とかで生きていくんだがな。
残念ながら今は海は危険地帯だ。
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