第53話:終のはじまり
「陰の五芒は陽を呑み陽の五芒は陰を巡る! 古廻流・裏陰陽術――
そう言いながら、
人と虎が融合したとしか思えない、この神の肉体になった今でも感じる恐怖に本能が意思を超えて動く。
このままでは〝シヌ〟と分かったからだ。
だから無意識に叫ぶ、「頭が吹き飛んでもイイ! 全頭最大出力で放つデスッ!!」と。
さらに続く悪夢。
古廻は目前に迫る馬頭羅漢砲を睨みつけると、「ガアアアアアアッ!!」と妖気を込めた怒気を口から放つ。
アリエナイことだが、それで一瞬馬頭羅砲が止まる。アリエナイ!!
怒気を放ちながら左の親指・人差し指・中指だけを立て陰陽術を行使。
「
『『『『『御意!!』』』』』
「――堕天は
左手で空中に五芒星を描き、それぞれの頂点に黒い霊符が張り付く。
マズイマズイマズイ! 来る、大技がッ!!
「――
黒の霊符は五芒星に描かれた妖気の塊の頂点に張り付きながら、一気に押し出される。
互いを輝く紫色の妖気の線で結び、そのまま馬頭羅砲へとぶつかった瞬間、一瞬拮抗した。
「そんな霊符ごときで、この文曲の全力がやぶられるはずガアア……エ?」
バカナ?! 何だというのだ!!
拮抗したのもつかの間、黒の霊符が互いに結んだ妖気の糸をまといながら、馬頭羅漢砲を切り刻んでいくだと!?
し、しかも変則的に動き回り、あの高密度の霊圧の塊がバナナを糸で切るように、〝ぬめり〟と落ち消滅?
冗談ではない! このままでは、あの凶暴な妖気の網に殺られる。
「えええイ! 座して死をまつのなら、宝ヶ池の霊力全て使い果たしてもオオオオオ!!」
地下の霊力を咒力に変えて、最大出力で防御の結界を構築。
肉々しい塊から肋骨が突き出し、シェルターにしてガードをする。
迫る黒い霊符は一気に広がると、回りに展開していた馬頭百首を跳ね飛ばし、そのまま網をしぼるように縛る。
「この程度でエエエエ!!」
さらに地下霊脈から力を吸い込み、耐えしのぐと同時に攻撃にうつろうとする、が。
「爆・散ッ!!」
「鬼畜かキサマ!?」
妖気で出来ていた太い糸が、さらに発光すると高熱を放ち爆散。
容赦なく体表の肉を焦がし燃やす尽くす。
が、そんな程度で神となった、この文曲の超再生力は敗れはしない。
肉塊の中に隠れ、骨のシェルターでやり過ごし、この時を待っていた。
そう、大技を放った後に必ず陰陽術師は〝一瞬固まる〟のだ。
舌なめずりをしながら、肉塊より本体を出して上空へと攻撃してやる。
両手を馬頭の頭に変えて外へ出た瞬間、最大出力で撃つ!!
「今度こそ勝ったぞ古廻戦極!! シン・馬頭羅漢砲!!」
「やはり黒札だけじゃ再生力を貫けなかったか。が、そう来ると思ったぜ。こっからは羅刹の討滅師として、文曲――お前を完全討滅する」
意味が分からない。なぜ動ける!?
「ッ、ソウカ!! その妖刀から妖気をもらったなアアアアア!?」
「御名答なんだよ。私達は二人で一人。
「クソッ! クソッ! クソオオオッ!!」
そう思いながらも、全力でヤツへと向けて馬頭羅漢砲を放ち続ける。
「裏・陰陽術で超強化した
大上段から一気に、この文曲へと妖刀を振り下ろす。
と同時に、ヤツの体から銀虎が妖刀へと乗り移り、そのまま斬撃となって襲いかかる。
瞳を銀色に輝かせ、サーベルタイガーのような二つの牙を眩しいまでに振動させ、あろうことか馬頭羅漢砲を呑み込みながら降って来た。
「ん、な、クソガアアアアアアアア!! ――――ッ? な、なぜダ! なぜ出力があがらないのデスカ!?」
パニクる頭に妙に澄んだ音色で、囁くようにヤツ声が響く。
「そりゃお前、全部喰われているからだろ?」
「そんなバぎゃなあああああああゔぁああああデスゥゥゥ!!」
全身にありえない衝撃を感じた後、視界が歪んだ事までは分かった。
が、ソレが最後となっ……………………。
「戦極様! 今なんだよ!!」
「わかった! 一切合切全て絶ち、悲恋の呪いの贄となれ! 逆神術式展開! 禍神封滅!!」
すでに粉々の肉塊と成り果てた文曲へ向け、妖刀・悲恋美琴を真下へと向けて左手で印を結ぶ。
瞬時に五芒星が出現し、中心部の上に〝封滅〟と紫色の炎が浮かび上がる。
次の瞬間、悲恋の刀身へと恐ろしい勢いで文曲だったナニカが吸い込まれ、ものの数秒で悍ましい肉塊は消え失せた。
と、同時に上空から硬質なガラスが砕ける音がし、見上げると神喰の月蝕が崩壊し、元の美しい満月が宝ヶ池を照らすのだった。
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