第52話:喰われてそうろう
そうだ、ヤツはどうやって馬頭が放った馬頭羅漢砲を
確かに直撃したはず。だからこそ、爆光りが見えた……が、なぜ無傷でいられる?
いや、違いますね。古廻戦極は式神をデコイにして逃れた、そうに違いない!
フン、からくりが分かれば対処も容易い。
そんな小細工すらブチ破る、圧倒的なプゥアアアアがあればあああああ!!
つ・ま・り――。
「――このメエエエエエクッス馬頭羅漢砲を喰らい消滅するのデエエエッス!!」
下腹部より下にある、根のように地下霊脈から吸い上げる快楽に
ブルリと全体を震わせ、理想通りの展開になる事に鼓動が早くなる。
「確定! 大確定! 虹色デス! この力がアレば、京都はおろか、四国の結界すら破壊デキルッ!!」
両腕で自分を抱きしめ、すぅぃぃとぅぅな未来に涙すらあふれた。
「キサマを滅し、祕巫女を殺し、やがては日本中を火の海に沈め堕とす!!」
最高の未来! それしかないし、それが天命だと思える。
神楽淵の最上席たる、北斗七星の一角として末席に居たが、それもくだらないことだと今ハッキリと分かった。
「おおお……感じる、感じるゾ!! 今、完全ニ! この文曲史上、最善最速最高最強最大のおおおお力がぁぁっァ!! み・な・ぎゅぃ・って・きったアアアアアアアアアアデスッ!!」
馬頭のアゴが大きくはずれ、口が三倍に広がる。
その奥からほとばしる光りの力が集約し、極限まで溜め込んだ力を一気に放出する――が。
「ンンン? なぜ動かなイ? ははぁ~ん。この圧倒的な力の前にビビった。そうデスネ? いいのですよ、いいのデス。この力を前にすれば、誰しもがひざまずく。許しを請うデスカァ?」
何だ? 生きる気力すらなくなったのか?
「だがもう攻撃は止められなイ! これで消え失せろ
螺旋状に収束した馬頭羅漢砲は、極太の霊力の塊となり古廻へと向かう。
勝った! 確実に! 思ったと同時に、いつの間にかさらに上空から
「俺は確かに護りの陰陽術が下手だ。が、攻撃は
「うん! 準備は出来ているんだよ!!」
そう古廻が言ったと同時に、黒い霊符が五枚現れる。
どうやら自立型の付喪神らしく、古廻の命令なしに動いていた。
「うちの陰陽術は特殊だ。特に俺はな……ヴンッ!!」
言霊を乗せ術を起動。黒い霊符もそれに合わせて支配下に収まる。
五枚がヤツの上下を右回りに回転し、それに合わせて手印を宙に刻む。
「
ヤツの背後に黒い門が現れたと同時に、重厚なきしみ音と共に虎の彫刻がある門が開く。
そこから出てきたのは、
そいつが勢いよく飛び出すと、ヤツめがけて襲いかかる。
喚び出しておいて、頭から豪快に喰われた事に唖然とした瞬間、銀虎が突然消失。
いや、正確に言えば
それは当然ヤツ、古廻戦極にだ。
銀の体毛が神喰の月蝕により赤銀に光を反射し、空は妖艶だが恐ろしい空間に変わった事を理解。
なぜならそこに居たのは、紛れもない真のバケモノだったからだ。
先程のバケモノよりさらに酷い、羅刹の化身とも言える凶悪な妖気をコレでもかと放つ。
「ば……ばけもの……ッ!? は、早く! もっと早くヤツの元へ届けヨ馬頭羅漢砲おおおおお!!」
なんて事だ。コンマ一秒が一分に感じるほど、上空のヤツはヤバイ。
見た目からして異常だ。
髪は虎柄のメッシュが入り、頬の模様も虎っぽく変化している。
更に虎耳まで生えているが、かわいいだ等とは思えない。
それも恐ろしいまでに濃密で、見ているだけで吐き気をおぼえる濃ゆすぎるものであり、並の者なら対峙しただけで良くて気絶レベルだろう。
「そうか、アレは能力向上のために喚び出したのか!?」
完全覚醒したとしか思えない、白銀の妖虎の加護を呑み込んだ
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