第49話 王城の食事会 3


 会食は終わり、城の者もみな仕事に戻った。料理は全て片付けられ、しばしの空白の時間の中にいるリイネとミキであった。


「リイネ―――あいつとは会わないほうがいいと言ったわよ私は」


 会わない方がいい、そんな男がいる。会わない―――そして合わない男がいる。ミキは、自分の意見を間違いだと思わない。

今も、リイネへ、良心のみを用いて話をしていると、自負している。


「ああいう感じのヤツなのよ……私は言っておいたからね?あらかじめ。そうでしょう?」


 モエルとリイネは出会うべきではない―――というのがミキの意見だった。必ず面倒が起きる。その予想、予感は最後まで崩さなかった。

 ある意味で予想を裏切らない男ではあるだろう。

 

「ええ、お聞きした通りの方でしたわ―――『フツーのこと』……全然フツーの方じゃあ―――ありませんでしたわね」

 

 言いながら、時期王女は微笑んでいる。ソースがミキである事前情報というか、予報を知っていた時期王女。それほどショックを受けていないようであった。

 そんなところが納得は行かぬ女剣士。


 モエルは真性の女嫌いである。

 ただ、流石に王族に対してはマトモな対応をするのでは、と考えるミキであった。だがあのザマでは、なんというか―――、救いがない。ていうかモエルは、あの男は女嫌いなのか?もっとひどい何かだと感じる、ミキである。

 笑んだ表情のまま、次期王女が言葉を続ける。


「ミキ? ……これは、お母さまの助言ことばなのですが……世間にはものすごい女好きの方がいらっしゃる。そういう方には近づくなとのこと……!」


 女嫌いもいれば、女好きもいる。

 王女候補さまは、その両親からの期待も強大なのだということは、ミキも予想しているところである。


「ええ……それはそれは、粘着質な言い方を延々とされて、いやになっていたところなんですの」


 わかっていると繰り返し言っても、一向に抑える、その話を気配がないんですのよ。そこに愛情があるのか確かめろ。愛情があったとしても、結局は男性に近寄るなとのことです。


「……そ、そうなの」


 一応同意しておこうか。

 長い付き合いだから慣れてはいるミキだが、理解が出来ない部分が多いリイネだ。

 本当にこれから王女になる、なろうという女なのだろうか。それとも自分が追いついていないだけか?

 困りましたわねぇ。とリイネは天井を見上げている。


 冷静になったとたんに、いろんな想いが浮かぶ女剣士だった。

 モエルは異性が苦手だと?

 自分だって、嫌いだと感じた男くらいはいる……。というか男が良くわからない。……だが、あんな火属性男みたいにはなりたくないなと、妙に心が引き締まる感じだ。

 反面教師という点では、モエルを覚えておいた方がいいのだろう。


「そんなことよりギルドのことはいいの?」


 話題を変えてから、いささか強引過ぎたかと、思い直すミキだった。ギルド、伝説の芳香。

 リイネも、それまでの悪戯イタズラっぽい笑顔を収めて囁く。


「組織の長がいま、実質拘束された状態にあります―――ギルドの動きも、止まった―――支配権を持つものが動かせない状態にあります」


 ロヴローはこの王城の一角で、監視下にある。

 問題は解決に向かっているのだ―――。


「解決するはず―――よね?」


「ええ。 ……やはりモエルさまにも感謝ですよね?ミキ」


「死んでもしない……!わ……! ミナモにならワンチャンお礼をしないと。……良い商品を扱う仕事とか、そんな話は知らない?」

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