定休日

定休日1

 10月1日、日本酒の日。西宮戎神社に冬雪達、宮水ASSのメンバーは顔を出していた。

 西宮の酒蔵が集まって格安で試飲、珍しい日本酒の販売と、ボスである榊と酒が好きなブリジットのテンションは極めて高かった。比例して本日は仕事は全てオフ。とはいえ冬雪とクロは未成年なので、それらがどれだけおいしかろうが、飲む事はできないので魅力に関してはいまいち分からない。クロは榊に買ってもらったオツマミの裂きイカに牙みたいな八重歯で噛みついて食べている。袋に顔をつっこむようにしてはぐはぐ食べているクロを見てやや出来上がったブリジットがぎゃははははと笑ってクロにスキンシップ。クロはもみくちゃにされても気にもせずに裂きイカを食べる。

 日本酒ファンたちがそこら中にいて、ボスの榊もほろ酔いで各種酒蔵の関係者達に挨拶をして回っている。コロナウィルスの影響で入場制限をかけているとはいえ、かなりの人だ。よほどレアなお酒でもあるのか、長蛇の列ができている酒蔵ブースがいくつも見られる。臭いだけで冬雪は酔いそうだなと思いながら、裂きイカを食べ終わりそうなクロの為におでんを買おうとフードに並ぶ。

 こちらを睨んでいる女子高生くらいの女の子。確か、始末屋“よる”の崎田ゆかり。彼女もフードを買う為に並んでいるのだろう。少し離れたところで、すごい大怪我の宋と、彼の横で日本酒のイベントなのにアサヒスーパードライを飲んでいる赤松の姿。彼らも本日は仕事はオフなんだろうか? しかし、この列をもう一度並ぶのはちょっと嫌だな。フードは全部買ってしまおうと冬雪は考えて財布のお金とにらめっこをする。割高なこの手のフードメニュー、そして際限なく食べるクロとの組み合わせ。

 この前のレベッカの護衛任務の報酬をもらえるので今日は少しばかり贅沢をしようと心に決める。報酬の支給まで米とお漬物だけでしばらくしのがなければならないかもしれないが、同じ宮水ASSの先輩であるクロが美味しそうに食べてくれればそれでいいか。

 長い、というかどれだけ待たせるんだ。もう少しサクサクと並びが減らないものかと思っていたが、みんな考える事は同じで、この並びに何度も並びたくないから全種類なんなら複数購入している客が殆ど、フードを作る時間も相まって行列ができる評判の店くらいの待ち時間を受け入れなければならない状況が出来上がっていた。諦めようかなとちょっと思ったが、裂きイカを食べ終え空腹のクロがフードの並びにやってきた。それを見て、冬雪はお手洗いに行きたくなろうが、ここで銃撃戦が起きようが我慢しようと心に決めた。

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