8−8 串カツ屋『よる』で情報交換
串カツ屋『よる』の店に到着、来客用駐車場に宮水ASSの社用車を停車すると宋について店内に入る。「止まれぇ!」と言ったのは大型リボルバーを向ける赤松、ガスマスクをつけたゆかりもショットガンを構えて「宋先輩大丈夫です?」と声をかける。それに宋は二人の前に出て手を振りながら戻る。
「店長、ゆかりちゃん、銃をおろしてください」状況を理解した赤松はリボルバーから弾丸を抜いてテーブルにゴトンと置く。「ゆかりも弾ぬけ」
「えぇ、てんちょーの仇いるじゃないですかー」
「ええから、お前じゃ勝てへん」
「はぁ? ホームの尼で実弾ありならいけますってー」
ブリジットはそう挑発されて「は? クソガキが吹きよるわ」と軽々と挑発に乗る。そんなブリジットの前に手を出して榊がなだめる。
「はいはい、そこまで」榊は赤松と見つめあう。「榊さん、ウチの宋くんがお世話になりました。で状況は?」
「そうですね」と榊が話し出す前に店内を見渡してから、ここに来た目的の一つ。
「とりあえずビール頂いていいですか? さすがに串カツは営業時間外でしょうから、一応仕事空けなんで」
赤松は冷蔵庫から瓶のキリンビールとサッポロの赤星を栓抜きと共に出す。「お通しは簡単な無限きゅうりでかんべんしてくださいね。串カツは豚串とじゃがいもくらいならまだあるんで何本か揚げますよ。ゆかり、宋くん、準備したって! とりあえず今は宮水ASSの二人じゃなくてお客さんや」
「はい!」
「えー、宮水ASSのブリジットぶちのめしてー」
「無理や! はよせい」
「すみませんねー赤松さん、仕事の祝勝会はここでしようって決めてたんですよ。まさかそっちもお仕事でブッキングとは思いませんでしたが」
ビールをグラスに注いでブリジットとチンとグラスを合わせる。「そう言ってもらえると嬉しいかぎりですよ」
「赤松さん、そちらもひまわりの贋作を7枚手に入れたんですよね? こっちには宋くんが破壊した7枚があります。こちらは8枚目の小学校から貸し出しの一枚を守れればよかったので、なんなら7枚は差し上げますが、どうします?」
「そうですね」
「とりあえずぶっ壊せば?」ブリジットがきゅうりを食べながらビールで喉を潤す。
「榊さんは? どう思います」
「ハリマオ会からはひまわりの強奪って美術館側にある物だったんですよね? だったら、この赤松さん達が強奪してきたのは多分、ウチが持ってきた物の代価品かなと」
それらを持っていた民間軍事会社側の目的はひまわりの回収じゃないかと。
「だったらこのヒマワリの絵は美術館に戻しますか?」
元々海外から送られてきた贋作とあらかじめ用意していた贋作を取り換えるつもりであそこに民間軍事会社はやってきていたという事になる。
赤松は興味なさそうにひまわりを見て「宋君がばらした絵の方が価値があるって事なんですかね? こっち方面は全く知識がなくて」
「ふーん」赤松もビールを飲んで席にするわるので、榊は情報を開示した。
「実は赤松さん、俺とBBなんですけど、始末屋の『よる』さんと六麓HSさんが銃撃戦をしていたの民間軍事会社と神戸で衝突してるんですよ。連中、元町の中華街で粉さばいてちゃちな稼ぎをしてましてね」
赤松も榊と同世代。二人が学生時代といえば、マジックマッシュルームにはじまりあやしげな薬を配る外国人が三宮、元町と多くいた。最近は神戸三宮より、大阪北や南に遊びに行く若者が多い為あまりそんな噂も聞かなくなったが、
「じゃあこの絵画、薬でも仕込んであるんですか?」
「それは、おたくの宋くんが7枚切り裂いた時に調べてみたんですけど、どこにも薬はみつからなかったですね。ただ、連中繋がりで分かる事と言ったらそのくらいだったんですけど、この絵画と麻薬につながりがあればハリマオ会から始末命令はでるなと」
榊はもうほとんど答えに辿りついたような顔なので「もしかして、インクですか?」
「そうではないかと」厚く油絵具が塗られているこのひまわりの贋作7枚、それを見た赤松は「麻薬の密輸に使われたと? 一体どのくらいの量が」
「それは分かりませんけど、仮に1キロ相当の絵具だったとすれば物によれば2000万くらいかと」
それを聞いたブリジットは悪い顔で「大きな店大阪の北に作れるやん」
「ほんまやな」赤松も笑って壊れた絵画達を見つめ「どこのダボくれかしらんけど舐めくさりよって」
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