第7話

 辺りは十分に暗くなったので民家に近づく。当然、民家の玄関は鍵がかかっているので、それ以外の侵入口を探す。目的は、食料とお金、それと着替えも。見つかっても認識阻害でなんとかなるだろうと、堂々と家の周りをぐるりと見て歩く。大きなガラス戸がいくつかあるが、当然どれも鍵がかかっている。まあ、こんな島で開けっ放しにしておけばすぐにでも盗まれるだろう。


 仕方が無いので、家の裏側に回る。勝手口の横にあるガラス戸の鍵付近のガラスに魔石を当てる。魔力を流すと魔石は赤く光り、ガラスが溶けた。これは魔石を調べている時に気が付いたことで、マントと同様に魔力を流すと熱を発生させるみたいだ。

不思議な事に、魔力を流している本人がやけどをすることはない。熱せられたガラスが冷えるのを待ってから、鍵を開ける。すぐに逃げられるように靴は履いたままだが、それだと音が立ちそうだったから、納屋にあった藁を靴に巻いてある。


 入った部屋は子供部屋の様で、今は誰も使っていないのか小さな机と椅子、小さなベッドだけが置いてある。ドアを開けて部屋をでると、すぐ横は風呂場と洗面台の様で、そこに服が干してあった。そこから、上着とズボンを拝借する。さすがに他人の下着を穿く気は無いので、そのうち新品をどこかで買おう。


 そこから進むと、タンスなどが置いてある部屋があった。そこを物色したがめぼしいものは無かった。リビングを通り、さらに進むとイビキが聞こえてきたので進むのをやめた。さすがに、人気のあるところで物色する勇気はない。万が一起きて来たらと思うと、足が震えてきた。換金用にといくつかの服を抱える。女性の服だと思うけど、高く売れそうならなんでもいいや。子供部屋にあったシーツでくるむと、そのまま入ってきたガラス戸から出る。気を付けていたつもりだったけれど、シーツでくるんだ包みが思ったより大きかったのか、ガラス戸に触れて音を立てた。


「なんだ? 誰かいるのか!」


 さっきイビキが聞こえた部屋の電気が付き、男の声が聞こえた。俺は慌ててその場を逃げ出す。幸い、玄関から一番遠い場所なので、すぐに追いかけてくる様なことは無かったけれど、できる限り離れようと走った。


 そのまま、バクバクと音を立てる心臓にせかされるように道にでてそのまま走り続ける。日中に確認していた方向だと思うけれど、ゆるやかに道がカーブしていたりしたら目的からずれるかもしれないが、今はじっとしていられる心境じゃない。


「はぁ、はぁ、はぁっ」


 何時間歩いただろうか。気が付くと波の音が聞こえる場所に来ていた。ここまでくれば、認識阻害もあるし、もう大丈夫だと思い腰を下ろす。改めて辺りを見回すと、洞窟のようなものが見えた。俺はしばらくそこに身を隠す事にした。


 

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