第8話 黒い人
黒い人
俺が14歳の中二の時の話だ。
その日は諸事情あり、両親が家に帰ってこない事になった。
突然に広い一軒家を独占状態となった俺だったが、急だったので友達を呼んで騒ぐことも出来なかった。
普段は二階の自分の部屋のベッドで眠るのだが、その日は夜風が気持ち良かったので、窓を開けて和室で眠ることにした。
せんべい布団を敷いて横になった。頭上には仏壇があり、右手には襖ではなく、白くスモークがかった横開きの扉。
その扉の奥はリビングになっているのだが、そのスモークがかった扉からぼんやりとオレンジ色の明かりが見えた。
叱る人もいないので、リビングの電気を消し忘れた事など気に留めず、そのまま眠りに付いた。
真夜中にふと目覚めた。しかし体が動かなかった。
金縛りというのにその時初めて襲われた。しかし金縛りなど夢の延長に過ぎないと思っていた俺は、逆に今の自分の状態に興味が湧いて、動かない体を反骨精神で動かそうとした。
脳からの体を動かせという命令に少しずつ反応があって、俺はそのまま膝を抱えるように丸まった。
――なんだ! やっぱりただの夢じゃないか、動くぞ!
俺は金縛りの謎を解明したかのような気持ちになって、そのままゆっくりと体を動かしていった。
遂に解き放たれた俺は、うつ伏せの状態で、手をついて上半身を起こす事ができた。目前には暗い仏壇。
その時ふと気になって、白いスモークの扉の方に振り返った。
するとそこに、人の頭のような黒いシルエットが、オレンジ色を背景にして、前屈みになって頭だけでこちらを窺っていた。
何故黒いシルエットだけでこちらを窺っていると思ったかと言うと、ぼんやりと見開かれた二つの眼らしきものがこちらに向いていたからだった。
ゾッとして身を引くと、そのシルエットはスッと頭を引いて消えた。
両親が帰ってきたのかと思って、起き上がってリビングや両親の寝室を覗いてみたが、誰もいなかった。
和室を飛び出した俺は、自分の部屋のベッドにくるまって、そのまま朝まで眠ることが出来なかった。そしてもう和室で眠ることはしなくなった。
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