エピローグ
ウルズ帝国帝都ウルド、中央国防本部―――通称キャメロットの総司令官執務室で、十代後半と思しき金髪碧眼の少年が正面ディスプレイに映る資料を高速スクロールしながら確認していた。
「ビレイグでの牽制はうまくいったようだね」
「はい、陛下。全て順調に運んでおります」
執務机に座る少年の対面で、長い黒髪の女が手元の端末を確認しながら答える。
「フヴェル軍はハルクキャスター半数を失い撤退。我が方の損失は〝フランベルク〟中破1、操者に死傷者はおりません」
「上出来だ。トリスタンは?」
女は顔を上げる。右目に黒い眼帯をしているが、妙齢で端正な顔立ちだった。
「ガラハッド卿が行った改修はうまくいっているようです。尤も、その本人は『まだ改修の余地がある』と言って、工廠に籠ってしまいましたが」
少年はクスリと笑う。
「そこは好きにさせよう。ところで、突然起こったビフレストについては?」
「巻き込まれたのはミーミルの1機で、〝ベラトリクス〟が飲み込まれたと」
「ミーミルは大慌てだろうね」
「ウルズは無関係だと回答しております。向こうが信用するかは別問題ですが」
少年は口角を上げ、女は飄々と事実を並べている。
少年はふと、思い出したように女に訊く。
「そうそう、そういえばランスロットが地球に向かって一週間経つわけだけど、本当にコンスタンチンを連れて帰ってきたらどうするんだい?翻意を抱いているのは明らかなのに」
女はそこで失笑する。
「明らかだからこそ、ランスロット卿にも牙を剥くはずです。そうなれば、ランスロット卿は必然的に謀反者であるコンスタンチン――ゴードン・レーガンを討つ。彼は『コンスタンチン卿とラブリュスの帰還』を命じられ、実行しようとしたが、国家の敵とわかり誅した。結論は見えております」
「なるほど。こちらが連れ帰れと命じた男は帝国に仇為す逆賊で、騎士はそれに気づき帝国のために討った、というシナリオになるわけか。ほんと、うちの宰相はよく考えているね」
少年―――国家元首にして軍の最高司令官である皇帝・アーサーと、
「光栄です、陛下」
長髪の眼帯女―――帝国宰相にして統合参謀本部議長を務めるベディヴィエールは哂う。
人々が知らないところで、世界のうねりが加速する。
リンケージたちはまだ知る由もない。
自分たちの旅が、まだ序章に過ぎないことを。
メタリックガーディアン ~君が手にする魔法の剣 外伝~ 神在月ユウ @Atlas36
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