第17話 ケイとお気に入り

 ケイが気に入っているものが、ふたつある。


 ゴムボール。


 バレーボールよりも小さいサイズで、ケイが咥えるのにちょうどいいサイズだ。これをハグハグとしながら俺の隣にきて、首や肩や背中を撫でであげると鼻を鳴らして喜ぶ♪ グ……グ……グ……と鼻を鳴らして喜ぶので、「グゥちゃんですねぇ」と言いながらさらにナデナデするのだ!


 ゴムボールを投げて、ケイがキャッチして遊ぶってことも公園でよくやる。


 俺がボールを投げると、ピョンピョンと跳ねるようにボールを追いかけるケイは子犬返りしたみたいにはしゃぐんだ。


 かわいぬぅ。


 リードの長さが足りないのは申し訳ない……ごめんね、ケイ。十メートルが最長なの……。


 次に、ぬいぐるみ。


 これは以前、おばあさんが踏切で困っていた時にケイが助けたことで、おばあさんがお礼にと作ってくれたものだ。


 ケイはこれを、どこに行く時も咥えて移動したいらしい。


 散歩や出社の時も、玄関まで咥えてくるから、俺がやめさせている。


「ケイちゃん、だめだよ」


 プイっと、顔をそらして取られたくないアピールも可愛いぬぅうううう!


「ケイちゃん、なくしたら困るから置いていこうね」


 しかたない……という目で、俺の手にぬいぐるみを置いてそっと離すのだ。


 家の中にいる時は好きにさせてあげているので、ボールかぬいぐるみを咥えて、俺の隣にやって来てはゴロンしてくっついてくる。


 定期的に、ぬいぐるみをお風呂で洗うんだけど、とても心配だという顔で見張られる。


 ご主人、痛くしてあげないでください。


 ご主人、顔に水をあんまりかけてあげないでください。


 と言われているかのようなプレッシャーを横から与えてくるケイは、ぬいぐるみの洗濯を終えてベランダに干すと、窓際から心配そうに眺めているのである。


 あまりにもケイが気にかけるので、俺はこのぬいぐるみをケイミニちゃんと呼んでいる。


「ケイちゃん、ケイミニちゃん持っておいで。寝るよ」


 こう声をかけると、ケイはニッコニコでケイミニちゃんと一緒に俺のところに来てくれるのだ!


 かわいぬ!


 かわいぬぅううううう!

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