第51話 ルーティーン
週に数回、個別級のお子さんの登校のお手伝いをしている。
最近、何がきっかけなのか解らないけれど、あるお宅の駐車場に足を踏み入れる事が、彼のルーティーンの1つになってしまった。
たった数歩、足を踏み入れれば気がすむ事なんだけれど、でも、それは、不法侵入だ。毎日の登下校は、社会のルールを守れる様にする為の学びの場でもあるので、ダメと言う事は、教えなければいけない。しかも、「このお家には入ってはいけません」ではなくて、「どこの家でも、自分の家以外は、勝手に入ってはいけません」と言う教え方をする必要がある。
けれど、彼は、全身で抵抗する。その抵抗する力に、遠慮がない。暴れたり、泣きわめいたりする。低学年でも、全力で抵抗されると、押さえるのは無理だ。私と、もう一人のスタッフと、彼のママの3人で、彼を抱えてその家から引き離すが、その後も、その拘りを引きずる時があり、ご機嫌斜めだ。このモチベーションで学校に行くと、先生も大変だろうなあと思う。どう対応すれば良いのか、皆で試行錯誤をしている。
道路に寝ている・家に入ろうとする・物を投げる、と言うイラストに、赤でバツを書いたカードを作り、出発前に、見せてみる。本人も「これは、バツね」と言ってはいるけれど、やはり、そのお宅の前に行くと、侵入しようとする。子供好きで、多目に見て下さるお宅なら良いんだけれど、直接叱られたり、学校にクレームを言ったりする方もいるので、ヒヤヒヤしてしまう。
それで、今は、ルートを変える方法を試している。
彼の成長と共に、こういった問題点も変化している。乗り越える事ができない壁はなかった。なので「これも、成長の証だよね」と3人(私ともう1人のスタッフとママ)で確認しあう。
来年の今頃、この事を懐かしく思える様に、1つ1つの問題をクリアーしながら、彼に寄り添って行きたいと思う。
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