第34話 Y君
「個別級」と言う言葉は、日本全国共通なんだろうか?
障がいや、何か理由があって、通常のクラスとは別に、それぞれの個性に沿った教育をしてくれるクラスの事。私が子供の頃に通っていた小学校では「なかよし学級」と言っていた。
その個別級に通っているお子さんの、登校時のお手伝いをしてもらえないか? と地域の子供達に関係する仕事をしている知人から言われた。数人で担当するので、週に2回程度だ。詳細を聞くと「Y君(一年生)の事かも」と思った。
Y君は、たいてい大泣きしながら、ママに手を引かれて登校していた。正門では、担任の先生が迎えに来ていて、そこでママにバイバイして、先生と一緒に校舎に入っていく。華奢な身体のママの背中には、下のお子さんがいて、とても大変そうだった。ママに話しを聞くと、行きたくなくて泣いている訳ではなく、一人で行きたくて泣いているそうだ。でも、信号を見ないで突き進んでしまうので、危なくて、一人では登校させられなくてついて来ているとの事。
Y君だったら、お手伝いしてあげたいな。でも、やはり、大切なお子さんを預かるには、それなりの覚悟が必要だ。責任もあるし。迷っていると、間に入っている行政の方と、担任の先生と、ママと、担当するボランティアの人で、打ち合わせをする機会を設けて下さる事になった。
打ち合わせは、学校の会議室で行われた。担任先生からは、Y君の行動の特徴や、注意する事、適切な声かけの仕方等をお聞きする。すごく、勉強になった。例えば、私は「学校に行くだけでも頑張っているんだから、少しくらい遅刻しても良いよね」と思っていた。その考えは間違えではないけれど、遅刻をすると、登校してからホームルームの間にする事があり、それが遅れてしまい、本人がそこでモチベーションが下がる事もあるので、遅刻をしない方が、本人がラク、との事。「なるほど~」と、目から鱗だった。それから、Y君の、入学してから今日までの様子をお聞きし、障がいがあるお子さんだけど、日々の積み重ねで、しっかりと成長されていて、出来る事が増えていると聞き、すごく楽しみになってきた。Y君の成長ぶりを、陰ながら、見守らせて頂きたいと思った。
この打ち合わせは、忙しい6人が、偶然ポンと時間が空いて、数日前に決まった事。こんな事も、何か見えない糸で繋がっている様な気がして、この出会いが、必然だった様な気がしてならない。
打ち合わせの後、学童にいるY君を、皆でお迎えに行く。丁度、おやつタイムだった。子供達は、密にならない様に、間隔をとって黙食していた。おやつのメニューは、何種類かのお菓子と、アイス。Y君も、ニコニコしながら、食べていた。
おやつを食べ終わった後、Y君と、ママと、ボランティアをする人達で、通学路を一緒に歩いて、Y君の家まで行く。
私を含めて3人のボランティアが、交代でお迎えに行くんだけど、Y君が私達に慣れるまで、暫くは、ママも同行してもらう。Y君には保育園に通う妹がいて、ママは、今まで、その子をおんぶして、一緒に登校していた。時には、突然走り出しちゃうY君を追いかける姿を見た事もあった。いろんな事が、すんなり進んで、少しでもママの負担を少なくさせてあげたいなあと思う。
この出会いに、感謝する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます