第5話 クラスメイトとの会話

***

「やっぱ、しずくちゃんかわいいーよなー!」

「まあ美人だよな。メガネ外してほしい」

 授業が終わると、遠野くんとなべやんが盛り上がっていた。

 遠野新志とおのしんし。僕の隣の席だ。彼は頭が良くて運動もできて(遠野くんはサッカー部のエースだ)、おまけにイケメンときたもんだから羨ましい限りである。クールなところもあって女子ウケもいい。

 それから渡辺公平わたなべこうへいことなべやん。彼はとにかくうるさ……いや、明るい。ノリと絡むとまあ騒がしいことこの上ない。授業中に注意されるランキング一位だ。ちなみに二位はノリだと思う。

 なべやんの席は男子列最後の席、つまり僕や遠野くんと横並びの席である。

 しずく先生がこの高校に来た時、ノリと一緒に職員室に行っていたのが、たしかなべやんだった。他に行った人はちょっと思い出せないが、遠野くんではなかった気がする。

「あのお姉さんキャラがいいよなー」

「なになに、しずくちゃんの話?」と、ノリがやってきた。

「なあ、ノリ。しずくちゃんのおっぱい、何カップだと思う?」

 なべやんは大声でそんなことを言う。

「ありゃCだな。そんなデカくない」

 ノリもそんなことを大声で言う。中学男子か。さすがは一位と二位。会話の内容も声の大きさも僕の理解を超える。

「Cってどんくらい? 奥寺さんくらい? 清水さんくらい?」

 なべやんはクラスの女子の名前を大声で言う。だから中学男子か。

 幸い、奥寺さんも清水さんも教室にはいなかったので直接本人には聞かれていないけれど、たぶん他の女子から伝わるだろう。

「あー。奥寺さんくらいかな」とノリが言う。

「ちょっとー。あんたたち何卑猥な話してんのー」

「げ。岩田!」

 岩田さんが白い目で睨むようにノリを見ていた。

「舞に言っちゃおー。中村くんとなべやんがいやらしい目で見てたって」

「いや。俺はだな。褒めていたんだよ。美しい形だなって」

 ノリ、それ墓穴だよと僕は心の中で思う。

「あ、やっぱそういう目で見てんじゃん」

「あ、いや……」

 ノリが言葉に詰まり、なべやんが「うははは」と笑う。

「もういいから。中学生じゃないんだから、そういうのは場所を選んでよね」

 岩田さんはクイッとメガネを上げると、少し小声になって「そういう話が嫌いな人もいるんだから」と二人に言った。

 ちょうど奥寺さんが教室に戻ってきて、岩田さんは席に戻っていく。

 岩田さんの後ろの席が奥寺舞おくでらまいさんの席である。

「ねぇ、舞ー、次の授業さー」

 そういえば、いつのまにか遠野くんはなべやんとノリの会話から離脱して、イヤホンをしながらスマホで音楽を聴いていた。


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