僕と彼女、それから私ときみの恋

雹月あさみ

プロローグ

プロローグ

 こんなにも人を好きになったのは初めてかもしれない。彼女のことを考えると何も手につかない、なんてドラマや小説では使い古された表現なのかもしれないし、みんな知っていることなのかもしれないけれど、僕にとってはまさにその通りで、勉強をしても食事をしても、テレビを観ている時だって、本当に何をしていても彼女のことを考えてしまうんだ。そして彼女は僕の頭の中で優しく笑いかけてくれて、あの透明な声で語りかけてくれる。

 それだけで平凡な僕の学生生活は本当に世界が変わったかのようにキラキラと輝いているし、映画の主人公のように、ロマンチックなBGMが流れ出すような気分だってしている。

 ああ。彼女ともっと話がしたい。彼女のそばにいたい。

 でもこの気持ちは良くないことなんだってことも知っている。好きになってしまったらもう、どうしようもないことなのだけれど、感情のまま動いてしまっては良くないってことぐらい僕だって分かっている。本当はこのまま想いを伝えたいのだけれど、それはダメなだってことぐらい……。

 誰かに相談しようとも思ったけれど、とても友人には相談できないし、家族だなんてもってのほかだし。それか、僕とあの人のことを全く知らないインターネット上のSNSや相談系サイトにでも投稿してみようかとも思ったけれど、この想いを言葉にしたらどこか遠くに逃げていってしまうんじゃないかと思って、だから僕はその時が来るまで、この想いは僕の中だけにして誰にも言わないことにしようと思う。

 そして僕自身で考えて、結論を出そうと思う。

 でもきっとこの想いを伝えたら世界が一変するんだろうな。どんな結果であろうとその時には笑顔でいたい。

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