第07話 幼馴染の血中濃度の関連話

語り部の交代:音咲響子

 凛に(上加瀬くんの)国家機密について尋ねられた。

蛭子玉と相対している現状で、誤魔化し通す訳には行かないか。

「凛、どうして上加瀬くんが

STEELE SHOOT(=鋼鉄の蹴撃)を放てるか、

理解出来ているかしら?」


「え、ええと……。並外れた脚力と、帯電装置があるから?」


「流石ね、半分は正解よ。フットボールでの上加瀬くんの、

FW(=フォワード)としての才能と、

我が社の機械製造部が粋を結集させて開発した、

ELECTRIFICATION SNEAKERS(=帯電スニーカー)が

彼の必殺技を後押ししていることは確かだわ。でもね……」


「でも?」


「四肢の鋼鉄化こそが、今、叩き台にされている国家機密の全貌なの。

血液中にある成分で、最も有名なのは?」


「……ヘモグロビンに含まれる鉄分。元素記号Fe。それが何か?」


「鉄分の血中濃度を極限に高めて、凝固することで、

それは鋼鉄と化す……と言う仮説は、果たして絵空事に過ぎないかしら?」


「STEELEは鋼鉄……だから鉄分凝固がその都度おこなわれていたんだね!

翔ちゃんの血中濃度のコントロールがいわゆる国家機密なの?」


「そうとも言えるわね。上加瀬くんの血中濃度をコントロールしている

IRON BLOODこそが国家機密。

血液製剤部が国の依頼で開発して、その被験者が、

偶然、上加瀬くんだったって訳なの」

 凛に、娘に大嘘を吐いてしまった。

偶然なんて大出鱈目。上加瀬くんじゃないと駄目だった理由を、

いつか話せる日が来るだろうか?

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