魔法が忘れ去られた世界で願いを

六角ルビー

第一章 海に浮かぶ島

第一話 冒険の始まり

 ある日、海に浮かぶ島ディストリア諸島で古ぼけた書物が発見される。それは近隣諸国の王国デルキルタスの首都フューリへと運びだされた。その書物を開くと見たこともない文字が書かれており、解読をするのに難解を極める。デルキルタスの王は、この書物が人類の新たな発展へと繋がるであろうと考え、文字を解読できたものには数え切れない程の賞金を与えると提示した。賞金に目がくらんだ解読の専門家たちは、誰よりも早く解読しようと急ぐのであった。その時に書物の複製本が何冊も作成され名がつけられる。名は未知なる神秘と出会いに心を込めて「福音」と呼ばれるようになった。


 時が進み、ついぞ解読されることのなかった書物のことを誰もが忘れかけていた。


 そんな時代の中でも文字の解読を諦めない人物が存在した。首都フューリの住宅街に住んでいるアート・セルリアという名を持つ青年だ。彼は賞金に目がくらんだ専門家たちとは違い未知なる冒険を夢見る青年であり、書物にはディストリア諸島の謎が隠されていると思い込んでいた。



 太陽が沈み街明かりが点き始めたころ。部屋に、こもって複製本の文章を睨みつけていた彼は突如、雄たけびを上げた。


「ついに!ついに分かったぞ!」


 その書物の文章に書かれていた内容はディストリア諸島の地下には、巨大な建造物が存在し聞いたこともない鉱物や生物の名前があり、アートが思っていた通りのことが書かれていた。


「早速、冒険の準備だ!書物・お金・傷薬・解毒薬それと保存食っと」


 アートはウキウキしながら荷物を麻袋に入れて準備の支度を始める。


「あとはーそうそう、これを忘れちゃあいけない」


 そう言いながら壁に立てかけてある短剣を腰につけ、目的地に指をさす。


「さあ出発だ!港はこっちだな!」


 アートは歩みだすディストリア諸島に存在する神秘を目にするために。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る