魔法が忘れ去られた世界で願いを
六角ルビー
第一章 海に浮かぶ島
第一話 冒険の始まり
青い光が宙に浮く巨大で広い空間に複数の声が響く。物がなく誰もいない空間なのに声だけが聞こえる奇妙な状態。そんな場所で声の主達は空間に近づいてくるであろう人の事を気にしていた。
『我らが子孫が近づいてくるのが分かる』
『少し歪だが魔法が使える体のようだ』
『すでに我ら一族は滅びたと思っていたが、これほど幸運な事はないだろう』
『もうこれ以上、我らに魔物を押さえておく力はない』
『時間がない。あの子を覚醒させ魔物を消滅させるのだ』
『あの子がここまでたどり着けるように魔法に願おう』
『そうだな。我らの心を一つに……』
声が沈黙するのと同時に空間が青い光を激しく帯びていく。宙に浮く青い光も呼応するように、より一層光り輝くと部屋中に大きく響くほどの声が駆け巡る。
『魔法よ導け‼』
光はやがて誰かを祝福するような柔らかな光へと変化し、部屋全体を包み込むのであった。
♢
ここはプラトディアと呼ばれた世界。人々は王の庇護の下、金属を使用して城下街や町村で生活をしている。主に作物を育てる者、武器を作る者、狩猟する者などの様々な職業に就いて人々の暮らしは回っていた。
そんな生活を続けていたある日のことだった。海に浮かぶ島ディストリア諸島で古ぼけた書物が発見される。それは近隣諸国の王国デルキルタスの首都フューリへと運びだされ、王に高上い光が宙に浮く巨大で広い空間に複数の声が響く。物がなく誰もいない空間なのに声だけが聞こえる奇妙な状態。そんな場所で声の主達は空間に近づいてくるであろう人の事を気にしていた。
『我らが子孫が近づいてくるのが分かる』
『少し歪だが魔法が使える体のようだ』
『すでに我ら一族は滅びたと思っていたが、これほど幸運な事はないだろう』
『もうこれ以上、我らに魔物を押さえておく力はない』
『時間がない。あの子を覚醒させ魔物を消滅させるのだ』
『あの子がここまでたどり着けるように魔法に願おう』
『そうだな。我らの心を一つに……』
声が沈黙するのと同時に空間が青い光を激しく帯びていく。宙に浮く青い光も呼応するように、より一層光り輝くと部屋中に大きく響くほどの声が駆け巡る。
『魔法よ導け‼』
光はやがて誰かを祝福するような柔らかな光へと変化し、部屋全体を包み込むのであった。
♢
ここはプラトディアと呼ばれた世界。人々は王の庇護の下、金属を使用して城下街や町村で生活をしている。主に作物を育てる者、武器を作る者、狩猟する者などの様々な職業に就いて人々の暮らしは回っていた。
そんな生活を続けていたある日のことだった。デルキルタス王国の北に位置する海に浮かぶ島ディストリア諸島。そこで古ぼけた書物が発見されたのだ。書物は王国の首都フューリへと運びだされ、王に献上されることとなる。その書物を開くと見たこともない文字が書かれていた。すぐさま研究機関へと預け解読を開始するのだが、彼らでも困難を極めるほどだった。結局、どれだけ時間を掛けても解読できず諦めかけていたその時だった。何を思ったのかデルキルタスの王は人類の新たな発展へと繋がると考え、一般にも写本としてだが公開することに。おまけに文字を解読できたものには数え切れない程の賞金を与えるとも提示した。賞金に目がくらんだ解読の専門家たちは誰よりも早く解読しようと急ぐ。その時に書物の名がつけられたのだ。名は未知なる神秘と出会いに心を込めて「福音」と呼ばれるようになった。
数百年の時が進み、ついぞ解読されなかった書物のことを誰しもが忘れかけていた。そんな時代の中でも文字の解読を諦めない人物が存在した。首都フューリの住宅街に移住してきたアート・セルリアという名を持つ青年だ。幼いころから両親に与えられた書物を解読しようと躍起になっている彼は、賞金に目がくらんだ専門家たちとは違い未知なる冒険を夢見る青年であり、書物にはディストリア諸島の謎が隠されていると思い込んでいるのであった。
そんな彼が解読を始めてからいくつもの時が流れ、太陽が沈み、街明かりが点き始めたころの出来事であった。部屋にこもって複製本の文章を睨みつけていた彼が突如叫び出した。
「ついに!ついに分かったぞ!」
その書物の文章に書かれていたのはディストリア諸島の地下に巨大な建造物が存在しているという内容だった。更に聞いたこともない鉱物や生物の名前があり、彼が思っていた通りのことが書かれていた。
「早速、冒険の準備だ!書物・お金・傷薬・解毒薬それと保存食っと」
彼は興奮を抑えきれないまま荷物を麻袋に入れて準備の支度を始める。
「あとはーそうそう、これを忘れちゃあいけない」と言いながら壁に立てかけてある短剣を腰につけ、目的地へと指をさした。
「港はこっちだな!」
アートは歩みだしたディストリア諸島に存在する神秘を目にするために。
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