第10話 いじめ問題②
あれから2日経ったが、連日ニュース番組で特集が組まれている。
ワイドショーなどが非科学的な論理を述べる場ともなっていた。
口が開けないと咀嚼も出来ず流動食を流し込むしか無いらしい。
直ぐに命が危ないような状況ではないようだった。
当初伝染すると思われたこの病気は実際には最初に発症した人以外で後から発症した人はほぼいないという事が分かった。
つまり感染しないという事なのだが一応一週間は学校が休みになるらしい。
男が見た特集では発症状況などもかなり詳細に分析されていた。
10代が最も多く、次いで10代より下、次に20代となり、30代と40代も少しいて、50代以上だとあまりいない。
つまり若者が圧倒的に多いという事、男女比は男が少し多いぐらい。
年代別に発症・非発症を比較した資料では体格が良かったり、頭が良かったり、美人だったり、家がお金持ちだったりする比率も結構高いらしい。
このデータを見てうちは大丈夫そうだなと思う男であった。
発症から5日目、変な共通点がネット上で噂されるようになった。
俗に言う〈嫌な奴〉ばかり発症しているとの事。
発症から7日目、民間の調査会社が私立中学校の協力を得て発症者が居る計10クラスでアンケートを取ってみたところ、発症者が嫌い・どちらかといえば嫌いを合わせた平均が70%以上となり、好き・どちらかといえば好きを合わせた平均の5%を大きく上回っている事を公表した。
勇気を持って公表した民間の調査会社は発症者に対して悪意がある、病人に鞭打つ態度だと世間から批判された。
発症から9日目に同じ民間の調査会社は批判に負けず、上記のアンケートを独自のルートで社会人を含む全年代に適用してみた結果、全ての年代で同じ傾向である事も分った旨を公表した。
また、実施したアンケートの項目の中に、あなたから見て発症者がいじめをしていたかどうか?を尋ねる追加項目がありYesが多数あった旨を同時に公表した。
発症から10日目、日本政府は民間の調査会社に対して調査の詳細データを無料かつ迅速に提供するよう要請した。
調査会社は多国籍資本の会社であり、居丈高に無料で全てを要求する日本政府の要求を一旦拒否した。
正当な対価を支払えば良いだけである。
日本政府は対抗措置として調査会社に対し、要請に応じないと労基署と国税局の査察を行なう旨を通告した。
調査会社の経営陣は政府がいじめまがいの事をしてくる事に憤慨した。
疚しい事は無いはずだが、査察によるイメージダウンと社員への影響を考え夕方になって渋々了承の返事を政府側の担当者宛に送った。
そしてその夜、日本中に激震が走った。
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