第3話 小さな兄妹
夜になり、男は寝てまた夢をみた。
小さな兄妹が見える。二人はもう何日も食べていないように見える。
部屋の中は散乱し下の子のオムツはパンパンに膨れており熱もあるようで、掛け布団の上で無造作に寝かされていた。
開きっぱなしの冷蔵庫の中は空っぽだ。窓はガムテープで閉じられている。
上の子は辛うじて字が書けるようで、テーブルの上にみみずが這ったような字で「いもおとたすけてくだい。かみさま」と書かれた紙が置いてある。
直ぐ側で兄もペンを握ったまま寝ていた。
男は怒る。何だこれは?と親を探すと、何故か女親が遠くの街で酒を飲んで騒いでいるのが視えた。コイツが親か「痺れろ!」と命じた。
途端、女親は身体の力が抜け痺れたように動けなくなった。
飲んでいたグラスを落とし椅子から転げ落ち、顔面を激しく床に打ちつける。
前歯が折れ、血が吹き出した。
一旦、それに満足した男は兄妹に一番近い警察官を探す。
パトカーに二人で乗っているのを見つけた男は、当たり前だが運転していない方の警察官を兄妹の住むアパートの部屋の内側に移動させた。
警察官は驚いた。車で巡回中に気付けば誰かの家の玄関内にいる。
「ここは一体…」
このままでは自分が不法侵入者になってしまうのでは?と考えたが、何やら凄い異臭がする。
これは確かめないとと部屋に入ると兄妹の惨状を見た警察官は、急いで救急に連絡し二人を救急搬送した。
男はその光景を確認して微笑んだ。
男は目が覚めた。
昨夜は何やら夢を見たような気がする。
朝食を取りながら朝のニュース番組で、自宅に閉じ込められ放置された兄妹が助かったというニュースをやっていた。
近頃嫌なニュースが多い。助かったなら良かったと思った。
またニュースキャスターが不思議な事を言い出した。
子供を発見した警察官は、車で巡回中のところをこの兄妹の部屋に送られた。という事だった。
何を馬鹿馬鹿しい、そんな事があるか馬鹿が。男は一笑に付す。
インターネット上では子供達が助かった経緯の話題と合わせて、母親がなぜか事件の日から全身不随の重症で入院している。天罰かもとの噂が囁かれていた。
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ファンタジー小説も書いています。
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