第■章
真面目ではあったものの要領が悪く、独学や授業だけでは点数が伸びなかったため母親が勝手に雇った家庭教師。
そんな人に、恋をした。
日中は小さな敷地で酪農や農業に勤しんでおり、焼けた褐色の肌がとても綺麗な女性。夕方頃、家に訪ねてくるその人は、お姉さんのはずなのに少し子供っぽい。そんな人柄が佐藤に親近感を湧かせた。
見た目が美しい。ということもあるが、学校にいる女生徒にはない妖艶な魅力がその教師にはあり、泥沼のように心の奥へと侵食していた。
初めて恋をした、初めて異性の事で眠れない夜を過ごした、まったく頭から離れない。
そして佐藤は"初めて"をその人に捧げる、と心に決めていた。
「でね、この問題は……って聞いてる?」
「あッはい! 聞いてます、
トロンとした目で先生を見る佐藤。ポーっとした顔は少し赤みを帯びており、声は
「えーウッソだー。絶対違う事考えてたでしょ? んー? 先生に話してみ?」
「………」
「黙ってちゃ分かんないよぉ? 気になるなー、気になるなー」
佐藤は一ヶ月前に坂口に告白した。
しかし結果は撃沈。それでもめげずにアプローチを続けた佐藤に根負けし、坂口はある条件を出した。
"今期の試験で学年一位を取ること"
それが出来たら考えてあげる。と。
それから佐藤は何かに取り憑かれたように勉強。
机の上では問題演習・予習復習。トイレや食事・風呂でも暗記。登下校ももちろん勉強。一日10時間以上の勉強。
その努力の結果、晴れて全教科高得点・学年一位を獲得。もちろんその結果は、坂口に報告した。
でも、何もない。
いやもしかしたら後で……。いや、でも……。
とそんなドギマギした気持ちを抑え、佐藤は大人しく坂口のレッスンを受けていた。
そんな佐藤の気持ちを察したのか、坂口は椅子からゆっくりと立ち上がって佐藤へと顔を向ける。
「うーん、コレが終わってからにしようと思ってたけど……やっぱり佐藤君は"あの約束"が気になってるのかな?」
机に向かっていた二人は、目を合わせる。
「せ、先生……?」
坂口は少し中腰になり、椅子にちょこんと座る佐藤の耳元に吐息がかかるほど、顔を近づけて質問する。
「ねぇ、佐藤君……"付き合う"ってことはさ……、そういうことを……『する』ってことだよ?」
坂口はゆっくりと自身の体を押し当て、向い合うように佐藤の膝の上に座り、話を続ける。
「先生に『めちゃくちゃ』にされてもいいの? もしそうなら………──」
佐藤はスーッと、軽く指先で太ももを何度も何度もなぞられ、少し荒くなった息を、耳の奥へと直接流し込まれる。
「あ……、先生……あっ……」
そんな佐藤の様子を見ると少し
「そんな顔されたらもう……我慢できない……。いいの……? 本当に食べちゃうよ……?」
太ももから徐々に上へと上がっていく坂口の手。
佐藤の目の前には
ずっと思ってきた相手に求められ、佐藤は辛抱たまらず腕をバッと広げ、抱きしめ言葉を返す。
「全部、全部あげます……。だから、だから我慢しないでください………」
消え入りそうな声で告白した佐藤は、バンッと押し倒され、気がつくと床に仰向けに寝ていた。
ハァ……ハァ……と聞こえる大きな息遣いは、部屋にいる
「嬉しい♡ そんなに食べられたかったの?」
「ずっと……ずっと思ってました……」
笑みを浮かべながら坂口は、股がった生徒のボタンを一つ一つ外し、はだけて見える胸から腰までの肌、それをスーッと舐め回すように見る。
「あっ、
「………ッ」
佐藤は恥ずかしそうに自分の顔をバッと腕で覆うも、隠しきれない耳が今にも沸騰しそうに赤い。
必死になっている佐藤とは対照的に、坂口はゆっくりとした愛撫と口づけを始める。
佐藤の全身には途方もないような快楽と幸福感が溢れ、今にも果そうな自分を抑えることで精一杯。
坂口はそんな佐藤を見てゆっくりと、濡れた自分に膨らんだモノを
「あー……気持ちー……」
坂口は少し涎を垂らし、少しずつ少しずつ佐藤の上で動く。
「……ッ、先生ッ、もう──」
「まだダメ。我慢……」
佐藤が果てそうになったらピタッと止まり、またゆっくりと上下に動く。
寸前で何度も何度も、何度も何度も止められた佐藤の頭はおかしくなる。
その行為は電撃のようなビリビリとした快感と、コップから溢れそうな感情を、全身へと巡らせる。
「あっ……イッ──ッ」
神経を通し脳から分泌される快楽物質は今か今かと我慢の限界。
坂口は腹の中でビクビクッ、とした生徒の震えを感じ、頃合いを告げた。
「もう無理? いいよ♡ それじゃあ………」
『一緒にイきたい』。そんな思いで佐藤は必死に合図を待つ。
陸上のピストルや餌を前にした犬のように、脈打つ心臓と脊髄が遺伝子を放つその瞬間を図る。
「それじゃあキミを……──」
好きな女を孕ませたい。という欲求だけが佐藤のシナプスを駆け巡り支配する。そしてその時、その瞬間は───────。
「キミを殺すね♪」
音もなく崩れ去った。
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