君と、今年も。

まる

これ以上ない幸せ

僕は今、待っている。

"涼くんもうすぐ着くよ!あと5分くらい!楽しみ!"

そのメッセージを見て思わず微笑んでしまった。かわいいなって。

"着いてるから待ってるね"

そう返信し、彼女はどんな服装で来るんだろう?とかきっとあのマフラーは巻いているんだろうな。とか色々想像しながら彼女を待っていた。

しばらくすると

「涼くーん!お待たせ!」

と手を振りながら駆けてくる彼女。やっぱりあの赤いマフラーを巻いて、もこもこしたあったかそうな服を着て。かわいい。

「そんな走らなくても…似合ってるよ。」

「えへへ、ありがと!遅刻するかと思っちゃった…。待たせてごめんね…。」

少し恥ずかしそうにする君もかわいい。遅刻しても怒らないんだけどなあ…。

「待ってないよ、大丈夫。よし、行こうか。」

僕は彼女の手を握り歩き始めた。

ここら辺は毎年イルミネーションがとても綺麗で僕らにとってはお決まりの場所だった。

「ここさ、毎年綺麗だよねぇ…。」

「来海、毎年ここに僕と来たい!って言うもんね。」

「え、なに?!ダメなの?!」

「違う違う、来海がそう言ってくれて嬉しいだけだよ。」

同じ会話を去年もした気がする。

「そーいえばさあ、涼くんって好きな人出来た?」

イルミネーションを見ていたはずの彼女が僕の顔を見て聞いてきた。

「何言ってんの、僕が好きなのは来海だよ。ずっと。」

彼女は一瞬、悲しそうな顔をした。と思う。

「なんでそんな顔するの、ほんとなのに。」

「分かってる、嬉しいよ!涼くんいつもありがと!」

また、去年もしたような会話をした。

「もう少し行けばツリーが見えるね。みんなそこで写真撮ってたよね、確か。今年は撮ってみる?」

返事がない。

「撮る?」

「うん!撮ろ撮ろ!なんのポーズにしよっかなあ…。」

いつも通りの明るい声にほっとした。だけどなんだか今日はいつもと感じが違う。どうしたんだろう…。

「来海?どうしたの?」

「ううん、大丈夫!……わあ!見て!涼くん!」

そう言われ見た先には大きな大きなツリーがあった。僕も彼女も大好きなツリーが。キラキラと輝いて今年が1番綺麗なんじゃないか。と毎年思う。

「今年が1番綺麗なんじゃない?」

「あ、僕もそれ思った!あはは、毎年思ってるね!」

そう言いながら彼女と笑い合い、これ以上ない幸せを感じていた。

「さーて、涼くん、どこで撮りたい?」

「その前に、さっきから僕ら見られてない?」

「え!ほんと?!やだなあ…なんだろ…。」

彼女は、はっ、とした顔をして

「それ、去年も言ってたよ、でも誰もいなかった、んだよね?多分…いや、分かんない!」

「ほんとに?」

「ほんと!…あ!あそことか良いよね!」

彼女はグッと僕の手を引っ張って走った。

「走らなくてもいいよ、も〜…かわいいな。」

「へ?あ、ごめん!よーし、撮ろ〜!」

「もうちょいこっち。」

そう言いながら彼女を僕の方に寄せる。そして写真を撮った。


「ねぇ、来海。来年も来ようね。」

彼女は嬉しそうに笑顔で

「うん!もちろん!涼くんからなんて珍しい…?」

「また来年もあのツリー見たいと思って。」

「………もちろん、とか言ったけど、ほんとは私…。」

「ん?」

「ううん!やっぱりなんでも!あ、ここでいいよ!今日はありがと!」

「うん、こちらこそ。帰れる?」

「なーにそれ!大丈夫大丈夫!じゃあね!」

そう言って駅に向かって駆けていく見送って僕も歩き出した。


帰る途中、今日の写真を見返そうとカメラロールを開いた。

「え…?嘘だろ…?」

僕は慌ててスクロールをする。どこにも彼女が写っていない。そうか、イルミネーションだけ撮っていたのかもしれないと最後に撮った写真を見る。

「え………。」

そこには笑顔の彼女は居らず、僕だけが写っていた。

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