悪役宰相の息子に転生した僕はクラスメイトたちに討伐されかけましたが、負けずに底辺から這い上がって復讐しちゃいます。
藍枝 碧葉
第一部 クラスメイトたちに捨てられた僕は辺境から起ちあがる
第一章 異世界転生ライフを満喫してたらクラスメイトたちが革命を起こした件
第1話 悪役宰相の息子に転生しました
「なあ、頼むよ! 元はといえば同じクラスメイトだろ──!」
「おねがい、命だけは助けて! あたしは最初から革命とかイヤだったのよ──!」
王城のバルコニーから見下ろせる王都の中央広場に、次々と引き出される、同世代の少年少女たち。
その全員が口々に助命を嘆願すべく、僕に向けて声を張り上げている。
だが、僕は──いや、僕たちは一切聞く耳を持たない。
オマエたちが革命と称してやってきたことに対するこれが報いなんだ。
「ようやくここまでやってこれた……」
僕は隣に佇む、鎧を
すると、少年は数歩前に進み出て、剣を
「これより、革命と称して、この国──《トルーナ王国》を
風に乗って遠くまで届いた宣告に、広場に集まった群衆たちの歓声が爆発した。
『うおおおおおーーーーっ!』
『《トルーナ》解放バンザーイ! 《王国十三将》バンザーイ!』
割れんばかりの歓声だったが、僕たち十三人は表情を変えることは一切なかった。
なぜなら、この群衆たちも、僕たちを地獄の日々へと突き落とした共犯だったからだ。
僕、ノクト・エル・ドランクブルム──
今から、それを語ろうと思う。
少し長くなるけど、最後までつきあってもらえると嬉しいかな。
○
「あーあ、オレも異世界転生しちゃいたいなー」
「って、ジュンキって、まさか異世界転生とか信じちゃってるイタい系?」
「なワケねーだろ、ネタに決まってんだろ」
放課後の教室、僕たちは馬鹿話で盛り上がっていた。
異世界転生──そもそも、アニメやマンガ、ライトノベルなんかの創作の世界の話なんだと思い込んでいた。
だって、そうだろう? 常識で考えてもフツーにありえないよね。
でも、その常識はアッサリと打ち砕かれた──
○
「ノクト様、お急ぎください。姉上様方が手配なされた礼服の
幼い頃からのつきあいになる少女メイドが焦りを含んだ口調で、窓際に佇む僕を急かそうとする。
だが、僕はその声を聞き流して、装飾が施された大きな窓から外を見下ろしていた。
「この世界に生まれて、もうすぐ十五年、まさか僕自身がファンタジーな異世界に転生するなんて、信じられないよなぁ」
窓の向こう、
群れ飛ぶ鳥と並んで滑空する
僕が住んでいた世界──現代世界に、このようないかにもファンタジーといった雰囲気の巨大都市なんて存在していなかった。
そう、この僕──
なぜか、異世界に転生してました──ホント、いつの間にっていうか。普通に学校に行ってたハズなんだけどね……
「……クト、おい、ノクトってば。なに、一人で意味不明なこと呟いてるんだよ」
そう、この世界での僕の名前はノクト──ノクト・エル・ドランクブルム。
そして、この目の前にいる金髪の美少年はシラリス・ファスタ・トルーナ。
ついでに、ムキーッと
僕たちはこちらの世界で、まもなく十五歳の誕生日を迎えようとしている。
《トルーナ王国》──それが僕が転生したこの国の名前。《ティールデオルム大陸》の西端にある大陸有数の大国だ。
ちなみに、その大国を統治する国王の末子が、この金髪美少年シラリス。
でもって、国王を補佐──というか、
「まあ、その方が高校生活を平穏に過ごせるだろうから、狙ってやってるんだけどね」
「……また、ノクトが意味不明なこといってる」
「って! だーかーらー! もう時間がないんですってばー!」
フロースがツカツカと歩み寄って来て、僕の目の前で両拳を握って
「ノクト様、自覚してます? ノクト様の十五歳の誕生日、
「そんな、大げさな。すでに何人もの兄君や姉君が父上にこき使われてるし、僕なんか、適当な
「なにいってるんですか! 国王を意のままに操って容赦ない手段でこの国を治めている冷血宰相の最後の息子ですよ! いろんな意味で注目されているに決まってるじゃないですか!」
「……っていうか、それをないがしろにされている国王の息子の前で堂々と話すかな」
ぼやくシラリス王子の前で、今さらハッと気づいたフロースが、派手に床に
ちなみに、僕の転生前の世界では、それを《ジャンピング土下座》と呼んでいた。
「もももももも、申し訳ございませんっ! シラリス様がいらっしゃるのを、つい失念してしまって」
「つい、じゃねーよ」
シラリスがため息をつきつつ、肩をすくめて見せる。
「まあ、オレたちだけの時はいいけどさ、外では気をつけてくれよ。下手したら投獄、死罪だぞ」
「ははははは、ははーっ、承知いたしましたぁー、シラリス王子殿下」
「それは、もういいよ」
そのやり取りに僕は思わず吹きだしてしまう。
僕とシラリスと、そしてフロース。この三人は偶然にも同じ日、同じ時間に産まれたそうだ。
その縁もあり、さらに三人とも王城内で生活していることもあって、幼少期から一緒に過ごすことが多かった。
「ていうか、誕生日パーティって、シラリスも一緒だろう? だったら、シラリスだって忙しいはずじゃ……」
「オレはどっかの誰かさんと違って、やることはキチンとこなしてるんですーぅ」
わざと僕を
そして、一拍おいて、僕たちは同時に吹きだしてしまう。
この世界のこの国──《トルーナ王国》に転生して本当に幸せだと思う。
現実世界日本での生活は不幸とまでは言えないが、幸せでもなかった。無味乾燥な毎日。
だが、この《トルーナ王国》での生活は、一気に鮮やかな彩りに満ちあふれたものになった。
満たされた衣食住──だって、優しい家族や友人たちと一緒に王城に住んでるんだよ。
新たな発見ばかりの日々──だって、異世界だよ剣と魔法の世界だよ。
刺激的な学習内容──だって、実際に剣や弓、それに魔法を扱ったり、政治の勉強をするんだよ。
何もできなくて不安な日々を送っていた赤ん坊だった頃はともかく、今となっては、現実世界日本に戻りたいなんて、
この魅力的な世界で、僕は全力で生き抜くつもりだった。
「どこまでやれるかわからないけど、僕たちでこの国をもっともっと住みやすい国に変えてみせる」
その僕のつぶやきに、シラリスが僕の手を取って、さらにフロースの手も上に重ねた。
「今の父君たちの《トルーナ王国》は表面的には反映しているように見えるけど、水面下では様々な理不尽や不満が渦巻いている。それが暴発しないうちに、正しいあり方に直していくんだ」
シラリスが熱っぽく語る。
「ノクトが教えてくれた国王とともにすべての国民が政治に参加できる体制……それを実現させることができれば、この国は大陸で一番豊かな国へと駆け上がることができる」
フロースが片手を胸に当てて半分目を閉じて言葉を紡ぎ出す。
「身分や貧富の差が少しでも縮まれば、理不尽に打ちひしがれる人も減ると思います」
そして、僕が二人の手を強く握った。
「絶対に僕たちがこの国を変えてみせる。そして、この世界の歴史を加速させるんだ──」
僕が二人と視線を交わすと、それぞれが希望に満ちあふれた笑みを浮かべる──その時。
突然部屋の扉が音高く開かれ、見知った
「ノクト様、シラリス様、お逃げくださ……うぎゃぁっ!!!」
前のめりに床に倒れた従者の背中が大きく切り裂かれ、血が噴き出していく。
「末王子様と冷血宰相の末息子ハケーン」
軽い口調で血に濡れた剣を肩に載せながら部屋に入ってきたのは赤毛の少年。
さらに、兵士を引き連れて数人の少年少女たちが
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